『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(IMAX-3D)

(Godzilla: King of the Monsters/132分 2019年 アメリカ=ワーナー・ブラザース、東宝)

レジェンダリー・ピクチャーズと東宝が製作し、ワーナー・ブラザースが国際市場に配給している〈モンスターバース・シリーズ〉第3作。
それなりに楽しめた第1作『GODZILLA ゴジラ』(2014年)、第2作『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)より大幅にスケールアップし、たかがCG怪獣だろうと侮っていると、思わずのけぞらされるほどのド迫力である。

2014年のロサンゼルスでゴジラとムートー(アメリカ版オリジナル怪獣)が対決した『GODZILLA ゴジラ』から5年後、今度はボストンを舞台にゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラが暴れ回る。
この〝怪獣オールスターキャスト〟で思い出されるのは、まったく同じ顔ぶれで製作された東宝版旧シリーズの『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)。

オリジナル版ではかつて金星を滅ぼし、5000年の眠りから目覚めた〝宇宙最強の怪獣〟キングギドラが地球を急襲。
これを迎え撃つ〝人類の味方〟モスラが、ゴジラとラドンに力を合わせて戦おうと呼びかける。

こうして3匹(3人?)でキングギドラを倒した本作は、ゴジラがそれまでの悪役から〝正義のヒーロー〟へとキャラ変するターニングポイントにもなった。
ゴジラも1954年の第1作で誕生してから11年目を迎え、シリーズも『地球最大の決戦』で5作目となり、親子連れをターゲットにした東宝のドル箱になっていたため、当初の「核実験が生んだ怪物」から「子供たちのアイドル」へのイメチェンを迫られていたのだろう。

本シリーズでも、ギャレス・エドワーズが監督した前作=第1作はゴジラを「人類の脅威」として捉えた原点回帰からスタート。
この路線は日本で庵野秀明が総監督を務めた『シン・ゴジラ』(2016年)でいったん一つの完成形に達した感があり、これからまた新たにゴジラ映画を作るとなったら、やはり何らかの方向転換を図る必要があったようだ。

本作の監督、1974年生まれのマイケル・ドハティは子供のころから東宝のゴジラ映画を観ていたそうで、本家『地球最大の決戦』のアイデアとテイストを生かそうと考えたのは間違いない。
ゴジラが人類の味方になり得ると見抜くのは芹沢猪四郎博士(渡辺謙)で、クライマックスではゴジラと見つめ合い、「さらば、友よ」と日本語で語りかけるあたりは、実に心憎い演出である。

このほかにも、本作には東宝版旧シリーズに捧げられたオマージュが実に多い。
ゴジラがキングギドラとの対決に臨むクライマックスでは伊福部昭のテーマ曲、モスラが登場する場面では古関裕而のテーマソングのメロディが流れ、ラドンが火山から飛び立つシーン、そのラドンの影が人間たちの頭上を通り過ぎてゆくカットは明らかに『空の大怪獣ラドン』(1956年)へのリスペクトを表している。

もうひとつ、内容とはまったく関係ないところで、へえ、と思わされたのが、日本では墜落の危険性が高いとして再三批判されたオスプレイがやたらとたくさん登場しては怪獣たちにたたき落とされていたこと。
ポスターを見てもわかるように、これまでの戦争映画でお馴染みだった戦闘ヘリや輸送ヘリはほとんど出てこず、オスプレイばかり飛び交っているので、これは現実の配備を反映しているのかと、そんなことがちょっと気になった。

一方で、怪獣たちと会話できる機械「オルカ」を開発したマーク・ラッセル博士(カイル・チャンドラー)、妻エマ(ヴェラ・ファーミガ)、娘マディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)が中心となる人間ドラマのほうにはあまり感心できなかった。
とくに、最初は怪獣を調査する政府直轄の秘密組織モナークの一員だったエマが、アラン・ジョナ(チャールズ・ダンス)率いる環境テロ傭兵部隊に拉致されてから再三態度を豹変させているあたりはあまりに矛盾が多く、いささか支離滅裂。

次回作ではゴジラとキングコングが対決するそうだから、ラッセル親子とは別のキャラクターを主役に据え、新たな日本人のスターを起用してほしい。
また、東宝版『キングコング対ゴジラ』(1962年)はキングコングの〝リングアウト勝ち〟に終わっているので、今度こそは完全決着を望みたいところである。

採点は80点。

TOHOシネマズ新宿・上野・日比谷・スカラ座、新宿ピカデリーなどで公開中

※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

2019劇場公開映画鑑賞リスト
4『アベンジャーズ エンド・ゲーム』(2019年/米)75点

3『ファースト・マン』(2018年/米)85点
2『翔んで埼玉』(2019年/東映)80点
1『クリード 炎の宿敵』(2018年/米)85点

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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