『友罪』(WOWOW)

(130分 2018年 ギャガ)

ポスターのキャッチコピーにあるように、主人公が友だちになった相手がかつて「少年A」と呼ばれた連続児童殺人犯だったことから様々な事件が巻き起こる、というサスペンス映画。
モデルになっているのはもちろん、1997年に起こった「神戸連続児童殺傷事件」、別名「酒鬼薔薇聖斗(さかきばら・せいと)事件」である。

埼玉の町工場に中途採用で就職した主人公・益田純一(生田斗真)は、たまたま同時期に入社した鈴木秀人(瑛太)と同じ一戸建ての社員寮に入居する。
益田は元雑誌記者で、酒場での口論から上司を殴ってクビになり、やむなく工員として再就職していた。

一方、寡黙な鈴木はまったく自分の過去を語ろうとしないが、彼が「元少年A」であることは観る前から宣伝によってわかっているので、あまりハラハラ、ドキドキはしない。
やがて、同じ埼玉県内で小学生男子が殺される事件が起こり、犯人は鈴木ではないかと思わせながらストーリーが進行。

この事件現場に、雑誌記者の杉本清美(山本美月)が山内修司(佐藤浩市)の運転するタクシーに乗って取材に駆けつける。
清美は益田の元恋人で、山内には子供を3人殺した息子がいた。

すると、鈴木はこの山内の息子なのか、と思わせておいて、こちらには正人(石田法嗣)という交通事故で子供を死に至らしめた息子が別にいることがわかる。
山内親子が鈴木及び益田とどう絡んでくるのだろうと思っていたら、最後まで観ていてもまったく接点がない。

このあたりから、脚本があまりに説明不足、登場人物の点描がてんでんバラバラなことが気になり、役者たちの大仰な力演ぶりが鼻につき始める。
なにしろ、正人がどのような事故を起こしたかだけでなく、肝心の鈴木がやった猟奇的な連続児童殺傷事件の内容を、この映画はほとんど語っていないのだ。

途中から鈴木が入所していた少年刑務所の矯正員・白石弥生(富田靖子)が登場し、彼女の娘・唯(蒔田彩珠)との諍いが描かれるが、これも物語の本筋とはまったく関係ない。
肝心のことがまるでわからないから、鈴木と元AV女優・藤沢美代子(夏帆)のラブシーンも胸に迫ってこない。

益田が記者を辞めた経緯も最後まで不明のまま。
まったく記者に見えない清美に益田が特ダネの動画を見せる場面も、本物の記者ならそんなバカな真似はしない、とかえってシラけてしまった。

幕切れでの益田の絶叫もただただ虚しく聞こえただけ。
筋立てが脆弱で思わせぶりなぶん、役者の大芝居の空回りばかりが目についた失敗作。

オススメ度D。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※ビデオソフト無し
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※ビデオソフト無し
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※ビデオソフト無し

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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