『ボビー・フィッシャーを探して』(WOWOW)

(Searching for Bobby Fischer/110分 1993年 アメリカ=パラマウント・ピクチャーズ 日本配給1994年 UIP)

7歳でチェスを始め、16歳でインターナショナル・マスターとなった実在の天才児ジョシュ・ウェイツキンの青春を描いた作品。
タイトルのボビー・フィッシャーは世界随一の伝説的プレーヤーとして知られ、チェスの実力だけでなく、過激な言動、精神病的な性癖、度重なる失踪やスキャンダルで国際社会を賑わせた。

まだ幼いジョシュ(マックス・ポメランク)がチェスに興味を示したのは、そのフィッシャーが行方をくらましていた1980年台前半。
近所の公園に寝泊まりしているストリート・チェスプレーヤーのヴィニー(ローレンス・フィッシュバーン)に才能を見出され、父親フレッド(ジョー・マンテーニャ)、ボニー(ジョアン・アレン)は戸惑いながらも息子を後押しするようになる。

フレッドはニューヨーク・タイムズのスポーツ記者で、チェスより野球に興味を持たせようとしてか、ヤンキースタジアムの記者席にジョシュを連れて行く描写が興味深い。
ぼくも20年前にメジャーリーグの取材に行って初めて知ったんだけど、アメリカのスポーツ・マスコミでは、記者が自分の子供と一緒に記者席で試合を見ることが許されてるんですよ。

息子の情熱と才能を伸ばしてやろうと考えたフレッドは、かつての名手ブルース・パンドルフィーニ(ベン・キングズレー)にジョシュのコーチを依頼。
この少年にはフィッシャーのようなプレーヤーになれる可能性があると感じたブルースは、ジョシュの好きなストリート・スタイルを捨て、芸術的チェスを目指せと指導する。

監督のスティーブ・ザイリアンは『シンドラーのリスト』(1993年)、『マネーボール』(2011年)などの脚本を書いたことで知られ、メガホンを取った本作も胸に染み入る佳作に仕上げている。
ただし、ジョシュがライバルの少年を負けさせるのは忍びないからと、あえて引き分けを申し出るくだりなど、あまりに優等生過ぎる態度や言動には首を捻りたくなった。

また、ボビー・フィッシャーがいかにこのジョシュとは好対照な人物であったかを知っているのと知らないのとでは、本作の理解度にはかなりの差が出てくるはず。
ぼくはフィッシャー評伝の決定版『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』(2015年、文春文庫)を読み、及びその映画化作品『完全なるチェックメイト』(2015年)も観ていたので、本作も十分興味深く観ることができましたが。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)C
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る