『十一人の侍』(東映チャンネル)

100分 モノクロ 1967年 東映

これも〈東映チャンネル〉の「集団時代劇特集」で放送された1本。
たまにこういう痛快でメチャクチャ面白い作品にぶつかるから、昔の東映映画を見るのはやめられないのである。

監督は工藤栄一、音楽は伊福部昭と集団時代劇ブームの嚆矢となった『十三人の刺客』(1963年)で組んだ名匠同士がふたたびタッグを結成。
工藤監督の意向が反映されているのか、田坂啓、國弘威雄、鈴木則文と3人がかりの脚本も『十三人の刺客』と『忠臣蔵』を足して2で割り、プログラム・ピクチャーの尺にまとめたような内容となっている。

いささか安易と言えなくもないが、結果的にはこれが奏功し、殺陣もドラマも実にメリハリの利いたダイナミックなアクション時代劇に仕上がった。
やっぱり、この時代の娯楽映画の職人はさすがだな、と改めて感心させられる。

館林藩藩主・松平斉厚(なりあつ=菅貫太郎)が鹿狩りの最中、無断で忍藩の領内に乱入し、年老いた百姓を過って弓で射た上、その無法な行為を諫めた忍藩藩主・阿部正由(穂高稔)まで殺してしまう。
忍藩次席家老・榊原帯刀(南原宏治)は幕府の老中・水野忠邦(佐藤慶)に訴状を送るが、斉厚が将軍の実弟であることから、水野は逆に正由及び忍藩が謀反を企てたものとみなし、忍藩の取り潰しを通告。

この仕打ちに激怒した帯刀は、自ら表立って動けないことから、親友でもある忍藩藩士・仙石隼人(夏八木勲)に斉厚を討ち、正由の仇を取ってほしいと依頼。
独断で斉厚を殺そうと企てていた三田村健四郎(里見浩太朗)、県ぬい(大川栄子)ら若き藩士たちが隼人の元に集結し、斉厚暗殺計画がスタートする。

健四郎らの覚悟が本物かどうかを見極めるため、「貴様らが腹を切らねば忍藩はお取り潰しになるぞ」と帯刀が切腹を迫る場面が面白い。
それならばと腹を切ろうとした健四郎を隼人が押し留める場面は定石通りながら、昭和の東映時代劇らしい展開である。

脱藩した浪士の独断による犯行と見せかけるため、隼人は妻・織江(宮園順子)を家に残し、ぬいとの駆け落ちを装って江戸に潜入。
隼人を追いかけてきた織江の弟・伊奈喬之助(近藤正臣)が単独で斉厚を討とうとして返り討ちに遭い、織江が隼人の足手纏いになることを恐れて自害するなど、時代劇ファンを泣かせるくだりが続いたあと、いよいよ隼人らが斉厚討伐に乗り出す。

参勤交代で江戸から国元へ帰藩する際、森林地帯を通るところを狙い、倒木や竹鉄砲で一網打尽にしようとする、という計画は『十三人の刺客』にそっくり。
一方、水野忠邦は館林藩家老・秋吉刑部(大友柳太朗)を通してこの計画を察知し、「暗殺計画を中止するなら忍藩のお取り潰しを考え直そう」と秘かに帯刀に持ちかける。

藩の存続が第一と考えた帯刀は忠邦の提案を受け入れ、苦渋の決断を下して伝令を飛ばし、隼人に計画の中止を通達。
ところが、その直後に藩の取り潰しの下達を受け、忠邦に騙されたことを知った帯刀は、陰腹を切って隼人らの元に駆けつけ、自分の判断が甘かったことを詫びて果てる。

このあたり、夏八木勲をはじめ、大友柳太朗、佐藤慶、南原宏治ら男臭さと存在感満点の役者たちが演じる裏切りと怨恨のドラマは見応えたっぷり。
斉厚役の菅貫太郎もわがままで尊大なバカ殿を巧みに演じており、11人目の刺客として加わる井戸大十郎役の西村晃も絶妙の味付けとなっている。

最後は豪雨の中、斉厚を追いかける11人の侍が館林藩の護衛隊と川べりで激突。
このクライマックスも迫力、切れ味ともに素晴らしく、いささか冗長だった『十三人の刺客』よりも短いぶん、かえって引き締まった印象を残す。

オススメ度A。

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
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34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12 『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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