『エマニエル夫人』(WOWOW)

(Emmanuelle/94分 1974年 フランス R15+)

最近、WOWOWで放送された1970年代ソフトコア・ポルノの古典的名作。
当然、ボカシ入りバージョンながら、女性器そのものを見せつけるハードコアではないので、十分オリジナルとして楽しめるようになっている。

ヒロインは現在でもよく知られている通り、フランス人外交官ジャン(ダニエル・サーキー)の新妻エマニエル(シルヴィア・クリステル)。
彼女が夫の赴任先バンコクで知り合った男女に異性愛、同性愛の手ほどきを受け、セックスの悦びに目覚める過程が描かれる。

クリステルはオランダ人のファッションモデルで、映画出演はこれが2作目。
演技はさほど上手くはないが、劇中で「お人形さん」とからかわれるうぶな役柄がよく似合っている。

とりわけ、ビー(マリカ・グリーン)と滝のほとりで戯れながら、何度も赤いキャップをかぶり直す場面の表情が可愛い。
このシーンは劇場公開当時、CMや予告編でも使われていた。

監督はファッション・フォトグラファー出身のジュスト・ジャカンで、デジタル・リマスター処理された映像は、セックスシーンだけでなく、風景描写も大変美しい。
本作が日本でも大ヒットし、男性より女性客を数多く集めたのは、クリステルの好感度の高さもさりながら、全編をソフトフォーカスで統一したジャカンによる映像美のおかげだろう。

ただし、エマニエルが性の伝道師のような老人マリオ(アラン・キュニー)に連れ回され、阿片窟に連れ込まれる終盤は感心できなかった。
マリオの講釈が退屈な上に、エマニエルが阿片を吸わされたあげく、タイ人の少年にレイプされるくだりも汚らしい。

ちなみに、クリステルが籐椅子に腰掛けたポスターは日本の配給会社が製作したオリジナル版。
当時、宣伝マンが100万円の使用料を払ってこの写真を入手し、爆発的なヒットに結びつけた裏話は、NHK-BS『アナザーストーリーズ』のネタにもなった。

実際のクリステルは9歳で義父にレイプされ、11歳で喫煙するようになり、22歳だった本作の撮影当時はヘビースモーカーだった。
シングルマザーとなったのち、一人息子をフランスに残してアメリカに渡るが、作品には恵まれず、コカインに手を出し、咽頭癌と肺癌に罹って60歳で亡くなっている。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12 『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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