『死刑台のエレベーター』(NHK-BS)

(Ascenseur pour L’echafaud/92分 モノクロ 1958年 フランス=ルクス・コンパニエ・シネマトグラフィック・ド・フランス 日本配給:映配)

これもこのトシ(56歳)になって初めてノーカット字幕版を観たサスペンス映画の古典的名作。
開巻、電話で熱烈に愛を囁き合うジャンヌ・モローとモーリス・ロネのクローズアップを交互に写し、徐々にカメラを引きながら、モローが電話ボックス、ロネがオフィスにいることをわからせ、そこにマイルス・デイヴィスのトランペットの音色がかぶさる。

このオープニングのインパクトはいま観ても実に強烈で、一気に、否応無しに作品世界へと引きずり込まれてしまう。
ロネは未開発国の開拓を専門とするゼネコン会社に勤務する幹部社員、モローはその会社の社長夫人で、ロネとは不倫の関係にあることが電話での会話からわかってくる。

ロネはきょう、社長を殺し、馴染みのカフェでモローと落ち合う計画を立てていた。
受話器を置いたロネは、自社ビルのベランダに出て階上の手すりにフック付きのロープをかけ、これをつたって外から社長室に忍び込むと、自殺に見せかけて社長(ジャン・ウォール)を殺すことに成功する。

しかし、事を済ませた後にモローに会おうと焦るあまり、会社を出る前、ベランダにロープをかけたままにしてしまった。
向かいの花屋の前に停めた車に乗った直後、ロネはブラブラ揺れているロープに気づき、慌てて会社に駆け戻る。

ところが、エレベーターでオフィスに上がろうとした矢先、守衛がビルの電源を落として、ロネは停止したエレベーターの中に閉じ込められてしまった。
そのころ、キーが差しっぱなしになっていたことに目をつけたチンピラ(ジョルジュ・プージュリイ)がロネの車を盗み、恋人の花屋の店員(ヨリ・ベルタン)を乗せて郊外へ向かう。

その間、待ち合わせ場所のカフェに現れなかったロネを探し求め、モローが夜のパリを彷徨い歩く姿が映し出される。
一方、ロネの車を盗んだチンピラは、宿泊したモーテルでドイツ人観光客夫妻を殺害。

次から次へと続く意表を突いた展開は一瞬も緩むことなく、それでいてフランス映画ならではの気怠い雰囲気を漂わせながら、劇的なエンディングへ突入する。
ただし、リアリズム全盛の今日から見ると、辻褄の合わない欠点が目につくのも確か。

まず、冒頭で重要な役割を果たしているロープが、いつの間にか路上に落ちてしまっていることについて何の説明もない。
さらに、作品全体のオチになっているモローとロネのツーショット写真が、明らかに第三者、しかもプロのカメラマンに撮られたものであることもあまりに不自然である。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12 『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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