何度もリバイバル上映されているにもかかわらず、いままで一度もノーカット字幕版を見たことがなかった。
ぼくが子供のころから劇場公開と同じくらい繰り返しテレビ放映されているため、改めて映画館に足を運ぶ気になれなかったからでもある。
しかし、今回NHK衛星放送の〈BSプレミアムシネマ〉で放送されたデジタル・リマスター版を見て、ああ、やっぱり大スクリーンで見ておけばよかった、と思わないではいられなかった。
あの有名なオープニング、空撮されたアルプスの鳥瞰が画面いっぱいに広がり、大草原の中にマリア(ジュリー・アンドリュース)が現れ、「サウンド・オブ・ミュージック」を歌う場面から、心中では後悔の連続。
歌では主題曲のほか、「ドレミの歌」や「エーデルワイス」がいい。
終盤、オーストリア・ザルツブルグの祝祭劇場で行われるコンクールで、トラップ家族合唱団(マリアと夫のゲオルグ・フォン・トラップ大佐=クリストファー・プラマー、ゲオルグの7人の子供たち)がこの2曲に続けて「さようなら、ごきげんよう」を歌い上げるクライマックスは何度見ても胸が熱くなる。
俳優陣では、ひとり舞台を演じるアンドリュースはもちろんのこと、夫となるプラマー、7人の子供たち、修道院長のペギー・ウッドがそれぞれ好演。
とくにプラマーは彼のキャリアの中でも屈指の名演で、マリアや子供たちと初めて打ち解ける場面では思わず涙が滲んだ。
もっとも、この映画はモデルとなった実在のトラップ家の人々、そのトラップ家の母国オーストリアでは必ずしも高く評価されていないという。
家族の反感を買ったのは、本来は優しく温厚な人物だった家長のゲオルグが、厳しくて冷酷な軍人であるかのように〝キャラ変〟されているため。
実際にはゲオルグよりマリアのほうがよっぽど怒りっぽく、ゲオルグがマリアをなだめながら合唱団を運営していたのが実情らしい。
一方、オーストリア国民の間では、実際はファシストだったゲオルグが、製作国アメリカ(というよりハリウッドか)のフィクション化により、アンチ・ナチスの英雄として描かれていることに、激しい非難の声が上がったといわれる。
しかし、本作がミュージカル映画としてのみならず、家族ドラマとしても非常に高い完成度を誇っているのも確か。
現に、劇場公開当時の賞レースでは前項デヴィッド・リーン作品『ドクトル・ジバゴ』(1965年)との一騎打ちとなり、本作とロバート・ワイズ監督がアカデミー作品賞と監督賞を受賞している。
日本でも大ヒットを記録し、長らく愛され続けていて、「ミュージカル映画の代表作」と言えば、何を置いても本作を真っ先にあげる人はまだまだ多いはず。
ちなみに、私のミュージカル・ベスト3は本作、『巴里のアメリカ人』(1951年)、『グレイテスト・ショーマン』(2017年)です。
オススメ度A。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12 『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C