『ラ・ラ・ランド』(WOWOW)

(La La Land/2016年 アメリカ=サミット・エンターテインメント 日本公開2017年 ギャガ、ポニー・キャニオン 128分)

今年1月劇場公開された『ファースト・マン』で高い評価を受けた監督デイミアン・チャゼル、主演ライアン・ゴズリングが2016年に初めてタッグを組んだミュージカル映画。
ゴズリングの恋人を演じたエマ・ストーンがアカデミー主演女優賞を受賞し、作品賞も獲得したと授賞式で間違えて発表されたことでも話題になった。

開巻、ロサンゼルスのフリーウェイで渋滞に巻き込まれたドライバーの男女が次々に路上に飛び出し、主題曲「アナザー・デイ・オブ・サン」を歌いながらダンスを繰り広げるダイナミックなオープニングが素晴らしい。
本作のヒロイン、女優志願のウェイトレス、ミア・ドーラン(ストーン)もこの渋滞の中でミュージシャン志望のピアニスト、セバスチャン(セブ)・ワイルダー(ゴズリング)と知り合う。

年代はいつと限定されているわけではないようで、ミアが携帯電話を使う場面がある一方、セブが車で聴いているカーラジオやミュージックテープはどう見ても1970年代の小道具である。
衣裳やセットも当時ならではのノスタルジックな雰囲気がたっぷり。

本筋に入ってからも『グレイテスト・ショーマン』(2017年)のように大がかりなダンスシーンが連続するのかと期待させつつも、この予想はいいほうに裏切られる。
ミアとセブが愛し合うようになる過程に合わせ、しっとりと歌曲を聴かせる場面が実にいい。

素のセリフも多く、セブがジャズへの情熱を滔々とミアに語って聴かせる場面、その情熱よりも金銭的成功を取ったセブをミアが非難する場面が胸に迫る。
このあたりは、『ファースト・マン』のアームストロング夫婦の口論を彷彿とさせ、一瞬ミュージカル映画であることを忘れさせるほど。

そして、最大の白眉は、ストーリーに大胆な省略を施し、「ミアとセバスチャンのテーマ」が流れるクライマックス。
このくだりの序破急ともいうべきテンポと展開、そこからビターな味わいのエンディングに着地させる演出と編集の見事さは、まさに名曲のメロディーラインそのものである。

『グレイテスト・ショーマン』がそうだったように、優れたミュージカル映画は人間ドラマの秀作と相通ずるものがある。
オススメ度A。

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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