明日もまたイチローは戦う

2019年のシーズン第1打席、セカンドフライを打つ直前のルーティン

きょうばかりは何を置いてもイチローを見に行かなきゃならなかった。
いま発売中のNumberに『イチロー開幕、かく戦えり。』なんていう拙文を寄稿していることもあるし。

それ以前に、45歳になったイチローのプレーする姿を生で見られるのは、今回が最後かもしれないし(少なくとも日本では)。
試合前の取材では、かつてイチローと対戦した経験を持つ元投手のプロ野球OBたちが、様々な予想を語ってくれました。

その1
「ホームランを打つでしょう。
こういう大舞台で何かをやってくれる男だから」

その2
「それよりも確実にヒットを狙ってくるんじゃないか。
アメリカに帰ってからのことを考えれば、なるべく多くヒットを打って感触をつかんでおきたいはず」

その3
「いや、現実的に考えたら、すごい結果を出すのは難しいですよ。
いくらイチローでも、年齢的に目が速い球についていけないと思う」

ほかにもいろいろ聞きましたが、以下略。
そんな声を聞いたあとで見たイチローのフリー打撃がすごかった。

ティー打撃を行わずにケージに入り、3~4スイングしては走塁練習をやって、またケージに入り直す、というルーティンを3度繰り返した

あのスリムな身体で(といまさら言うのもおかしいけれど)、次から次へとサク越えを連発。
いくら狭い東京ドームとはいえ、ライトスタンド上段まで持っていくんだから。

そう言えば、毎年ほっともっと神戸でイチローの自主トレにつきあっている新井宏昌・ソフトバンク二軍打撃コーチ曰く、
「練習でのバッティングは若いころとほとんど変わっていません」

これなら本番でも「その1」や「その2」が現実になるかもしれない、と思ってたんだけど、さすがに現実はそこまで甘くなかった。
第1打席はセカンドフライ、第2打席は8球粘って四球。

ともかく、どんな形であれ〝今季初出塁〟して、さあ、第3打席はどうなるか。
…とスタンドの期待が高まっていた四回裏、いったんライトの守備位置についたイチローが、ファーストを守っていたジェイ・ブルースと交代(ファーストにはダニエル・ボーゲルバックが入った)。

しかも、ベンチ前でチームメートたちと、ベンチに入ってからもスコット・サービス監督ら首脳陣と次々に握手とハグを繰り返す。
ああ、これで引退なのか…と、東京ドーム中に微妙な空気が充満しました。

しかし、試合後の会見でサービス監督が語ったところによれば、イチローは明日も出場する予定。
スタメンかどうかはわかりませんが、いいところで打ってくれることを期待しましょう!


スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る