『スペース・ロック』(WOWOW)

(Incoming/2018年 セルビア、アメリカ 90分/日本劇場未公開 WOWOW初放送:2019年2月7日)

WOWOWが日本劇場未公開作品を発掘し、時々とんでもない珍品を紹介している〈ジャパンプレミア〉で放送された1本。
主役はハリウッド映画にも出演している俳優で固めていながら、主要製作国はセルビアというのが珍しい。

ロンドンのビッグベンが破壊される事件が発生し、国際テロリスト集団ウルフパックの幹部アーガン(ヴァヒディン・プレリック)が逮捕される。
彼が部下の5人とともに収容されたのが、テロリスト専門の施設としてつくられた宇宙ステーション拘置所、というアイデアはなかなか面白い。

しかし、事件発生後5年経ってもアーガンはウルフパックの首領アルファの居場所を自白せず、建造費を出資した西側主要各国から抗議が続出。
拘置所の実態調査のため、CIA査察官ライザー(スコット・アドキンス)、パイロットのブリッジス(アーロン・マックスカー)、医師ストーン(ミシェル・ルヘイン)がスペースシャトルでステーションに乗り込んでくる。

…というあたりまでは、特撮のチャチな低予算映画ながら、脚本の上手さで見せるのではないか、と思わせる。
しかし、ステーションの看守キングスリー(ルーカス・ラフラン)のアーガンに対する拷問の手口が何ともありきりたりで、こちらの期待も急速にしぼみ始める。

なにしろ、名うての国際テロリストを自白させるのに、独房で熱蒸気を浴びせ、ハードロックを大音量でガンガン聴かせるだけ、というのだから締まらない。
しかも、収容者6人に対して看守はキングスリー1人と、いくら予算が少ないからとはいえ、手抜きが過ぎる。

それでも、テロリスト6人が脱走し、宇宙ステーションを乗っ取ってモスクワへ墜落させ、派手な自爆テロを試みようとするくだりは、そこそこの見せ場になっている。
この土壇場にきて主役のはずのライザーが裏切り行為に走る、というアイデアも意表を突いていて、その手があったかと思わせた。

脚本を書いたホルヘ・サラレギはプロデューサーが本業らしく、クライヴ・バーカー原作のホラー映画などを手がけている。
これで監督エリク・サラゴサがもう少ししっかりしていれば、〈ジャパンプレミア〉らしい拾い物になったかもしれない。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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