『柳生一族の陰謀』(WOWOW)

 わが映画鑑賞歴において、この東映時代劇を映画館で見ていないことは、いまだに悔やまれてならない。
 地上波テレビでの放送を見たときは、柳生但馬守宗矩を演じる萬屋錦之介の「夢でござある!」に度肝を抜かれ、これをスクリーンで見たらさぞかし圧倒されただろう、と歯噛みしたものだ。

 クエンティン・タランティーノはこの映画の大ファンで、原版のフィルムを入手し、自宅のドルビーサウンド付きホームシアターで萬屋の台詞芝居を堪能したという。
 監督の深作欣二もタランティーノ邸に招待されてこのドルビー版を鑑賞し、やはりラストシーンは劇場で見なければ意味がない、と改めて感動したそうだ。

 その萬屋とがっぷり四つに組んで、一歩も引かないカッコよさを見せているのが息子・柳生十兵衛役の千葉真一。
 クライマックスでは父・但馬守が担いだ3代将軍・家光(松方弘樹)の居室に侵入して暗殺するのだが、その瞬間をあえて見せず、萬屋の前に生首を転がして見せる、という省略と演出が効いている。

 脇に回った役者の中では、現在も高評価が定着している烏丸少将文麿役の成田三樹夫がやはり素晴らしい。
 上記の強面たちに比べると、出雲阿国の大原麗子、彼女を慕う名古屋山三郎の原田芳雄ら、当時現代劇の第一線にいた役者は印象が薄く、完全に食われてしまっているが、まあ、しょうがないかな。

 オススメ度A。

(1978年 東映 130分)

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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