開巻早々、タイトルバックに延宝6年(1678年)、4代将軍・家綱の治世で行われている浪人狩りの模様が映し出される。
大老・酒井忠晴(大友柳太朗)の命により、幕府奉行所が謀反を企む一派の一掃に乗り出しているのだが、しばらくはその目的や背後関係が見えてこない。
主人公は書院番・神保平八郎(里見浩太朗)で、妻・加代(三島ゆり子)に風呂場で背中を流してもらっていたところへ、奉行所の追っ手に追われた中島外記( 尾形伸之介)が転がり込んでくる。
中島を匿ったとみなされた神保も追われる身となり、加代は無惨にも斬り殺されてしまった。
神保は偶然出会った旗本・浅利又之進(平幹二朗)の家に身を隠し、みや( 宗方奈美)という女と知り合って、路上で筵をかけられた妻の死体を見せられる。
実は、みやはクーデーターを企む軍学者・山鹿素行(安部徹)の娘で、彼を山鹿一派に引き入れようとしていたのだ。
山鹿が初めて画面に登場し、以上のような内幕がわかるまで、この映画はたっぷり1時間かけている。
モノクロの陰影を生かし、ローアングルを多用した絵作りはこの時代の工藤栄一作品ならではの味わいを感じさせるが、いま見るといささかまどろっこしい。
作品全体が暗く沈んだ実録タッチなのは、製作当時に日本で頻発していた左翼運動の影響を受けているため。
監督の工藤は時代劇、現代劇にかかわらず、そういう時代背景を持ち込むのが好きな映画人でもあった。
それでも、山鹿一派が酒井の後ろ盾であり家綱の実弟、甲府宰相・綱重(可知靖之)を吉原に追い込み、暗殺しようと襲いかかるクライマックスはなかなかの迫力。
東映ファンならこの場面だけでも見る価値はある。
オススメ度C。