『Uターン』(WOWOW)

U Turn

 社会派の巨匠オリヴァー・ストーンが1997年に撮った犯罪サスペンス、というより一種の不条理劇。
 主人公ショーン・ペンがカリフォルニアのヤクザに借金を返済をするべく、現金を抱えて1964年型マスタングを走らせていたら、ラジエーターポンプがパンクしてアリゾナの田舎町スペリアに立ち寄り、ここで次から次へと様々なトラブルに巻き込まれ、町から抜け出せなくなってしまう。

 マスタングをビリー・ボブ・ソーントンの経営する修理屋に預け、ピオリアの大通りでカーテンを運んでいるジェニファー・ロペスに声をかけたのが運の尽き。
 ロペスに「家で冷たいものでもどう?」と声をかけられ、期待通りの展開となり、さあ、これからベッドイン、というときに亭主のニック・ノルティが帰ってきて、鼻っ面に強烈なパンチを見舞われる。

 たたき出されたペンが砂漠の道をトボトボと歩いていたら、ノルティが車で追いかけてきて、「乗っていけよ」と言われて町中まで送ってもらうことに。
 その車中、「実は、あの浮気性の女房を殺してほしい。あいつには5万ドルの保険金がかかってる。ちゃんと分け前もやるからよ」とノルティに持ちかけられ、ペンはびっくり仰天。

 ペンがとりあえず丁重に断り、冷たいソーダでも飲もうとドラッグストアに入ると、今度はここで2人組の強盗に遭遇。
 現金の詰まったショルダーバッグを奪われた次の瞬間、レジのオバチャンが散弾銃をぶっ放し、強盗もろともバッグを撃ち抜いて、ヤクザに返済するはずの札束が散り散りのバラバラになってしまった。

 ほうほうの体で修理屋に戻ると、ソーントンは「修理費150ドルを払わなきゃ車のキーを返してやんねえぞ」とくる。
 途方に暮れたペンは、こうなったらノルティの提案に乗ってロペスを殺すしかない、と決心するのだが。

 ここから先もさらに、キレまくっては暴力を振るうチンピラのホアキン・フェニックス、犬の死体を連れた盲の乞食ジョン・ヴォイト、一見まともなようで腹に一物ある保安官パワーズ・ブースなどなど、おかしくてアブナイ連中が続々と登場。
 この種の犯罪サスペンスではコワモテを演じることの多いペンが、新たな登場人物やアクシデントに遭遇するたび、情けないほどオタオタしているのが面白い。

 しかし、ペンが生き延びようとあがく終盤の演出はいまひとつパンチに乏しい。
 どうせならロッド・サーリングのように、もっと不条理に徹したオチをつけてほしかったところ。

 オススメ度B。

(1997年 アメリカ=トライスター・ピクチャーズ/日本公開1998年=松竹富士 15分)

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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