Miller’s Crossing
コーエン兄弟(監督は兄ジョエル、製作は弟イーサン、脚本は共同)が1990年に撮った本格ハードボイルド。
この兄弟コンビの作品にはどこか人を食ったところがあって、本作も意外な趣向やオチが用意されているのではないかと勘繰りながら見ていた。
ところが、案に相違して延々と正攻法で押し通しており、いささかビックリ。
が、これなら面白くなりそうだと期待させた矢先、肝心のヤマ場にきてシナリオの欠陥が露呈してしまう。
設定や登場人物はダシール・ハメットの『血の収穫』(1929年)を下敷きにしており、基本的にはストーリーもほぼそっくりそのままに展開していく。
『血の収穫』は過去にも『用心棒』(1961年/黒澤明監督、三船敏郎主演)、その〝無断リメイク〟『荒野の用心棒』(1963年/セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演)と、錚々たる顔ぶれによって映画化されている(本作ののちの1996年にもウォルター・ヒル監督、ブルース・ウィリス主演で『ラストマン・スタンディング』が製作された)。
そういう古典をコーエン兄弟が翻案したとなれば、まともなハードボイルド映画であるわけがない、と思ったんだけれど、おれの買いかぶり過ぎだった。
『血の収穫』の主人公コンチネンタル・オプに相当する主人公トム・レーガン(ガブリエル・バーン)は、最初のうちはアイルランド人マフィアのボス・レオ(アルバート・フィニー)の右腕だったが、途中から寝返ってイタリア人マフィアのドン・キャスパー(ジョン・ボリト)の味方につき、双方の抗争を激化させてゆく。
『血の収穫』自体や本作以外の映画化版と大きく異なるのは、主人公の動機が女を手に入れることにあるという部分。
トムはレオの愛人、娼婦のウィーバー(マーシャ・ゲイ・バーデン)に横恋慕しており、彼女とデキていることをレオに打ち明けてボコボコにされ、組織からたたき出されてしまう。
トムが生き延びるにはキャスパーに付くしかないが、キャスパーは味方に引き入れる条件として、彼に煮え湯を飲ませたウィーバーの弟バーナー(ジョン・タトゥーロ)を殺すようトムに要求する。
しかし、トムが惚れた姉のウィーバーは弟思いで、何とかバーナーを窮地から救ってほしいとトムに懇願していた。
果たして、トムはいかにしてこのピンチを切り抜けるのか、それともこのあたりでコーエン作品ならではのどんでん返しがあるのか。
大いに期待して見守っていたら、トムは森林地帯のミラーズ・クロッシング(ミラーの十字路)の周囲の森の中で、あまりにも簡単にバーニーを逃がしてしまう(ジャケ写の画像)。
しかもこのとき、森の入り口まで付き添ったキャスパーの子分2人は、トムがバーニーを殺すところに立ち会わず、「殺してきたぞ」というトムのセリフを鵜呑みにして死体を確認しようともしない。
これは明らかなシナリオの欠陥であり、ここから先の展開に対する興味が半減してしまった。
オススメ度C。
(1990年 アメリカ=20世紀FOX/日本公開1991年 115分)
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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
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