『暴動島根刑務所』(セルDVD)

 前項『脱獄広島殺人囚』(1974年)が好評だったため、同じ松方弘樹を主演に製作された〈刑務所シリーズ〉第2弾。
 ただし、実在のモデルがいた前作とは違い、本作は大正時代の事件を下敷きにしただけの完全なフィクションである。

 前作では現実通りヤクザではなかった松方の役も、本作では敵対する組織の幹部を殺害して9年の懲役刑を受け、島根刑務所に服役中のれっきとした暴力団員。
 ただし、やたらと反抗的ながらも義理人情に厚く、どこか抜けたところのあるキャラクターはまったく変わっていない。

 悪役は前作で刑務所長を演じていた金子信雄で、今回は牢名主のような囚人のボス。
 金子は養豚を生き甲斐にしている模範囚・田中邦衛をいじめており、濡れ衣を着せて懲罰房送りにしたことに松方が激怒し、金子を撲殺する。

 松方はその後、所外へ使役に出されたチャンスに脱獄。
 ところが、逃亡生活中に川で溺れかけていた少年を救い、警察から表彰されて正体が発覚、あえなく刑務所に逆戻りさせられる羽目に。

 そんな松方の向こうを張る所内のライバル・北大路欣也は、敵対する組の親分を殺したヤクザながら、松方とは対照的に極めて優等生的キャラクター。
 模範囚だったこちらは仮出所を認められたものの、親分の仇を討とうと命を狙ってきたチンピラを返り討ちにして、やはり刑務所に舞い戻ってくる。

 ここからが「暴動」の本番。
 養豚囚人の田中が看守に豚を取り上げられて投身自殺し、これを囚人側の連帯責任と見なした刑務所長・伊吹吾郎が囚人全員に食事抜きの懲罰を与える。

 これに食事以外に楽しみのない囚人が全員が激昂、所内に「メシ寄っ越せ! メッシ寄っ越せ!」と怒号が轟く中、松方が先陣を切って大暴動に発展。
 数ある東映ヤクザ映画の中でも、これだけスケールの大きな暴動シーンは滅多になく、大変見応えがある。

 囚人たちと看守たちが膠着状態に入った中、目端の利く北大路が抜け目なく所長の伊吹と取引に出る。
 というあたりで結末までの予想はつくが、1時間半きっちり楽しませてくれる昔の極道映画のお手本のような作品。

 オススメ度B。

(1975年 東映 97分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

59『脱獄広島殺人囚』(1974年/東映)A
58『893愚連隊』(1966年/東映)B
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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