松方弘樹、若かりし日の最高傑作ではないだろうか。
松方演じる主人公は白タク稼業で日銭を稼いでいる愚連隊で、若さと悪知恵で暴力団の大金を横取りしようと目論む姿が、ヤクザ映画というよりヌーベルバーグの青春映画のように描かれている。
監督とオリジナル脚本はこれが出世作となり、日本映画監督協会新人賞を受賞した中島貞夫。
タバコ銭やタクシー代をごまかしたり、やることなすこといちいちセコイ松方が、時折ハッとさせるようなセリフを吐く。
「電気冷蔵庫は5年の保証あるけど、ワイらは明日の保証もないんや」
「ワイら愚連隊やねん、ケンカするいうて、誰のためにするのや。日本かて勝てん戦争して負けたやろ」
闇社会でのし上がろうにも、強大な組織力をバックに持つ大手暴力団には到底敵わない。
それでも一攫千金を狙い、ヤクザのカネを横取りして一泡吹かせようとするのだが、スッタモンダのあげく、スタンリー・キューブリックの『現金に体を張れ』(1956年)によく似た結末を迎える。
エンディングで松方がつぶやく「当分はアカンで、ネチョネチョ生きとるこっちゃ」というセリフが実にいい。
これは劇場公開当時も話題になり、のちのちまで語り草になった、ということは、観た後で初めて知った。
愚連隊の仲間・荒木一郎、ヤクザの大幹部・高松英郎もいい味を出し、本作独特の雰囲気作りに大いに貢献している。
松方は本作公開の2年後、本作の発展形とも言える深作欣二の『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)でまた愚連隊のリーダーに扮し、深作作品ならではの凄絶な最期を演じた。
しかし、ぼくとしては、青春時代の儚さ、虚しさがしっとりと表現された本作のほうが好きですね。
深作よりも中島のほうが、松方の魅力を正しく理解し、うまく引き出していた、と言ってもいいかもしれない。
オススメ度A。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A