『猿の惑星』(NHK-BS)

Planet of the Apes

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011年)からリブート版シリーズが始まって以降、改めて再評価されているオリジナル版の第1作。
 人間、迂闊なことはあるもので、『猿の惑星・征服』(1972年)や『最後の猿の惑星』(1973年)はノーカット字幕版をチェックしているのに、肝心要の第1作はいままで地上波放送の吹替版しか見ていなかった。

 あまりにも有名なラストシーンはアメリカ映画の範疇を越え、世界映画史上に残るオチと言えよう。
 ぼくは1973年12月24日、『月曜ロードショー』(TBS系)のテレビ初放送の際に初めて見たのだが、「ここは地球だ、地球だったんだあ!」とチャールトン・ヘストンの声をアテた納谷悟朗の声はいまでもよく覚えている。

 あの場面があまりに衝撃的だったため、もっと唐突に自由の女神が現れたように記憶していたのだが、改めて本作を見直してみると、ラストの前にオランウータンのザイアス博士(モーリス・エヴァンス)がヘストンに対し、人類の文明が核戦争によって滅んだことを仄めかしている。
 いま同じ手法を使ったら、SNSで「オチが読めるぞ」とツッコミが入るかもしれない。

 このオチが長らくアメリカ人のトラウマになった(はず)ほどの効果をあげているのは、自由の女神の前で泣き崩れるのがヘストンだからでもある。
 なにしろ、様々な超大作で歴史上の偉人を演じてきたヘストンは当時、強く、正しく、保守的なアメリカを象徴する存在で、のちには共和党の大票田である全米ライフル協会の会長に就任しているほど。

 言わば「ミスター・アメリカ」「ミスター・タカ派」とも言うべきヘストンが、有色人種のメタファーである猿にとことんいじめられるだけでも相当ショッキングだったのに、最後の最後にこのオチでダメを押されてしまうのだ。
 そういう意味では、キャスティングの妙がこれ以上ドンピシャリとハマった映画もほかにないだろう。

 オススメ度A。

(1968年 アメリカ=20世紀FOX 112分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る