Silence
戦後日本文学の代表的傑作とされる遠藤周作の同題小説を、マーティン・スコセッシが映画化した文芸超大作。
1600年代前半、島原の乱から間もないころの日本・長崎で、幕府の切支丹に対する苛酷な弾圧の果て、ついに棄教(背教)せざるを得なくなるポトルガル人司教の生涯が描かれる。
巨匠となってからのスコセッシ作品はダラダラと長い映画が多く、本作も前半1時間半は結構退屈させられる。
が、主人公のセバスチャン・ロドリゴ神父(アンドリュー・ガーフィールド)が井上筑後守(イッセー尾形)に執拗に棄教を迫られ、信仰を捨てた師クリストヴァン・フェレイラ神父(リーアム・ニーソン)と再会するくだりはかなりの迫力。
作品全体としての完成度は高く、全篇を覆うムードもまことに重厚で、日本人の描き方にも偏見に満ちたところはない。
何度も繰り返される拷問の描写にはいささか辟易させられるものの、日本人の観客でも虚心坦懐に見れば、ある程度はそれなりの感銘を受けるだろう、と思う。
ただし、これは原作の問題点でもあるのだが、ロドリゴが踏み絵を強いられる寸前、「踏むがいい。おまえの足の痛みは、この私が一番よく知っている」(大意)とささやくイエスの声が聞こえてくる、という場面にはやはり違和感を覚えた。
仏教があまりに悪役にされ過ぎている(と、一応仏教徒である私は感じた)上、ロドリゴが心の内では死ぬまでキリスト教徒であり続けた(つまり殉教者だった)、と言い訳のダメ押しをしているかのようなエンディングにも承服できない。
背教という容易に結論の出ない命題に真正面から取り組んだ人間ドラマとしてはよくできているのだが。
オススメ度B。
(2016年 アメリカ=パラマウント・ピクチャーズ/日本配給KADOKAWA 2017年 161分 PG12)
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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
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28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
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24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
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8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
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5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A