『メッセージ』(WOWOW)

Arrival

 今時珍しい地球外生命体とのファースト・コンタクトを描いたSF映画で、劇場公開時にはアカデミー賞の作品賞をはじめ8部門にノミネートされるなど、高い評価を受けた。
 世界各地に巨大な繭か蛹を思わせる宇宙船ヘプタポッドが出現、言語学者(エイミー・アダムス)と物理学者(ジェレミー・レナー)がコンタクトを試みるうち、人類の意外な未来が明らかになってゆく。

 学者たちがヘプタポッドの中で接見する地球外生命体は巨大なイカのようで、グレイ風の顔が『未知との遭遇』(1977年)、長く伸びる手足(?)が『インデペンデンス・デイ』(1996年)のエイリアンを彷彿とさせる。
 また、彼らが墨のような液体を透明な仕切り板に貼り付けて表現する象形文字は、『ノウイング』(2009年)など、過去に見たSF映画に似たような前例があったと記憶する。

 目新しいのは、宇宙人との会話を解読する間に挿入されるアダムスの回想場面。
 かつては愛する夫がいて、息子も授かったものの、やがて離婚せざるを得なくなり、シングルマザーとなって苦労している私生活が淡々と描かれる。

 ところが、これが実は過去ではなく、どうやら未来の出来事であることが次第にわかってくる。
 そして、地球外生命体のメッセージにも、地球と人類の未来を予見する内容が綴られていた。

 そうこうするうち、地球外生命体との対話路線を推進していたアメリカに反発する国が世界で続出。
 ついに中国の軍部が暴走してヘプタポッドの一団に攻撃を始めようとする中、アダムスはようやく宇宙人たちの真意をつかむのだが。

 監督は昨年の『ブレードランナー2049』でいささかガッカリさせられたドゥニ・ヴィルヌーヴ。
 本作は打って変わった出来栄えで、抑制の効いた演出で全篇に緊張感を漲らせる半面、ノスタルジックな雰囲気も醸しだし、独特の映像世界を構築することに成功している。

 ぼくのような年寄りにはいちいちどこかで見たような既視感が始終つきまとうのが難だけれども、昔のSF映画を見たことのない今時の若い映画ファンには面白いかもしれない。
 オススメ度B。

(2016年 アメリカ=パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント/日本公開2017年 116分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る