原田芳雄がカッコよかった最後のころの映画だろう。
かつては全共闘の闘士として1968年の「10.21新宿騒乱」に参加、いまは歌舞伎町のしがないバーのマスターで、突然舞い込んで来たタイ人の女を匿い、彼女を追ってきたヤクザたちと対決する羽目になる、という役どころ。
ヒロインのタイ人女性ヤン・メイリンを演じているのは、当時香港映画のスター女優だった呂㛢菱(ルー・シュウリン)。
バーに集う全共闘仲間が石橋蓮司、小倉一郎、桃井かおり、山口美也子で、閉店パーティーで一緒に飲んでいるうち、おまえは10.21で何もしなかった、口だけであおるだけあおって逃げやがった、などとクドクド口論しているところを延々と映しているあたりがこの世代の映画らしい。
そんな原田と仲間たちを背後で見守りながら、ヤンを追うヤクザに目を光らせている刑事が蟹江敬三。
で、そのヤクザの親分が麿赤兒なのはまだいいとしても、香港マフィアが室田日出男とくると、いかにも仲間内でつくっている〝お友だち映画〟の臭みが鼻につく。
ほとんど全篇を歌舞伎町でロケ撮影。
いまはなきコマ劇場、ミラノ座、新宿プラザが見え、撮影当時公開されていた『ワーロック』、『ローズ家の戦争』(ともに1989年)、『病院へ行こう』(1990年)といった映画のポスターが写り込んでいるのが懐かしい。
吸っているタバコは、原田がセブンスターのロングサイズ、桃井がラッキーストライクと、どちらも意外なチョイス。
ラスト、銃撃戦でボロボロになった原田と桃井が歌舞伎町のミラノ座の前のゴミ置場にやってくると、原田がセブンスターをくわえて火を点け、それを桃井にくわえさせてストップモーション、となる。
しかし、撮っているほうも撮られているほうもカッコイイと思ってるんだろうけど、55歳になったばかりのぼくには何となく滑稽に見えた、というのが正直なところです。
若松孝二監督作品としては、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)、『キャタピラー』(2010年)よりだいぶ落ちる。
オススメ度C。
(1990年 松竹 106分)
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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A