『ロスト・エモーション』(WOWOW)

Equals

大戦争が勃発して全世界の99.6%が死に絶えた未来、残された人間たちが作り上げた生活共同体で、真の愛に目覚めるカップルを描いたディストピア映画。
 製作総指揮がリドリー・スコット、主演がクリステン・スチュワートとニコラス・ホルト、というので期待したが、正直なところ、いまひとつでした。

 舞台となる生活共同体は、〈イコールズ〉という名称(原題)の通り、すべての人間が均質化された社会。
 ここでは感情が芽生えることは〈SOS〉という感染性疾患に罹ることであり、その感情の振幅の大きさによって癌患者のようにステージ1から4までの段階に分けられ、4に達したら〈DEN〉という施設で安楽死させられる。

 しかし、実際にはふだん秘かに感情を押し殺して生きている人間たちも存在し、彼らは「闇感染者」として警察による摘発の対象になっていた。
 そうした中、愛し合うようになったスチュワートとホルトは、命を賭けてイコールズからの脱出を決行する。

 こういう映画はロケ地、美術、衣裳がしっかりしたツカミになっているかどうかがカギを握る。
 その点、出演者のほぼ全員に同じ白のコスチュームを着せ、日本の建築家・安藤忠雄がデザインした長岡造形大学、埼玉県立大学、狭山池博物館、MOA美術館、淡路夢舞台で撮影された本作の雰囲気作りは完璧に近い。

 当然のことながら、社会による様々な妨害が入り、スチュワートとホルトが離れ離れになって、さあ、どうなるか、というのが一番の見どころになるんですが、エンディングは反則じゃないかなあ。
 ヒイキのスチュワートはなかなかの好演だったけど。

 オススメ度C。

(2016年 アメリカ=A24/日本配給ツイン 2017年 102分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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