『チザム』(NHK-BS)

Chisum

 事実上、『ワイルド・ギース』(1978年)で終わった感のあるアンドリュー・V・マクラグレンが西部劇のヒット作を連発していたころに監督した1本。
 前項『駅馬車』(1939年)ではまだ32歳、血気盛んな無法者がよく似合っていたジョン・ウェインも63歳になり、西部開拓時代の傑物ジョン・チザムを貫禄たっぷりに演じている。

 チザムはニューメキシコ州のペコス川沿岸の土地を購入して牧場を経営、州の半分に達するまでに規模を広げ、10万頭以上の牛を放牧していたと言われる。
 包容力のある親分肌の人物で、この映画では周囲の反対を押しのけ、無法者のビリー・ザ・キッド(ジェフリー・デュエル)やパット・ギャレット(グレン・コーベット)をカウボーイとして雇う度量の広さもあったらしい。

 クライマックスはそのビリーがチザムの仇敵ローレンス・マーフィー(フォレスト・タッカー)を相手取って起こしたリンカーン郡戦争。
 ビリーたちが窮地に陥っている中、助太刀に駆けつけたチザムが数十頭(数百頭?)もの牛を暴走させ、マーフィー一味を蹴散らすシーンが爽快な見せ場となっている。

 史実とはだいぶ異なるようだが、今時の映画から失われてしまったカタルシスを味わわせてくれるクラシカルな快作。
 オススメ度B。

(1970年 アメリカ=ワーナー・ブラザース 111分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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