『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(WOWOW)

Le Grand Bleu

いまや巨匠となったリュック・ベッソンの出世作で、劇場公開当時のタイトルは『グレート・ブルー』だった。
 同時期に公開されたジュゼッペ・トルナトーレの『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988年)と同様、上映時間が異なるいくつかのバージョンが存在しており、先月WOWOWで放送されたのはフランス本国で最初に公開されたオリジナル版。

 ギリシアの海辺の街で育った2人のフリーダイバー、フランス人のジャック・マイヨール(ジャン=マルク・バール)、イタリア人のエンゾ・モリナーリ(ジャン・レノ)の友情と人生が描かれる。
 マイヨールは世界的に有名な実在のダイバーで、エンゾもエンゾ・マイオルカという実在のダイバーをモデルにしているが、内容はまったくのフィクション。

 幼いころ、父親を潜水事故で亡くしたマイヨールは、スポーツとしてのダイビングより、海やプールでイルカと戯れることに生きがいを見出していた。
 一方のエンゾは「ダイビングは男の中の男のスポーツ」が持論で、潜水記録の深度と時間を更新し続け、世界チャンピオンであることを誇りにしている。

 しかし、ダイビングの才能と心肺能力が上だったのはマイヨールのほうだった。
 エンゾに「おれと戦え」と競技会に誘われたマイヨールは、あっさりとエンゾの記録を更新してしまう。

 負けず嫌いのエンゾは、危険だからやめるようにという周囲の制止を振り切って新記録に挑戦。
 と、ここまできたところで、オチと結末はある程度予想できてしまう。

 作品全体の雰囲気は悪くなく、楽しんで見ていられるが、ところどころで引っ掛かりを覚えるくだりが少なくない。
 例えば、終盤の海中での葬儀は、明らかにロベール・アンリコの『冒険者たち』(1967年)にインスパイアされたもので、ぼくとしてはオリジナルがダブって素直に感動できなかった。

 また、潜水病にかかったマイヨールが深夜に突然起き出し、泣き叫ぶ恋人ジョアンナ(ロザンナ・アークェット)が止めるのも聞かず、発作的に海へ潜ってしまうところは動機が不明で理解しにくい。
 マイヨールが海に戻るのなら、天気のいい昼間にダイビングへ出かけたほうが快適だろうし、それなら納得できたのだが。

 オススメ度B。

(1988年 フランス、イタリア 132分)

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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