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『ビューティフル・マインド』(ザ・シネマ/スカパー!CS)
2015年05月26日(火)
A Beautiful Mind


 去る23日、1994年のノーベル経済学賞受賞者で、ゲーム理論の「ナッシュ均衡」で知られるアメリカ人数学博士ジョン・ナッシュ氏(86歳)が亡くなった。
 妻アリシアさん(82歳)と一緒に乗っていたタクシーがフリーウェイのガードレールに激突したそうで、事故の詳細や原因はまだ伝わっていない。

 その事故が起こったのは、ちょうどぼくがこの『ビューティフル・マインド』を見ていたころと重なる。
 まったく意味のない偶然でしかないのだが、それでもナッシュ博士の訃報をNHKのBSニュースで知ったとき、やはりドキリとするものを覚えた。

 本作はシルヴィア・ナサーによる同名評伝をロン・ハワードが製作・監督した映画化作品で、ナッシュ博士を演じたのはラッセル・クロウ。
 第74回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞(アキヴァ・ゴールズマン)、主演男優賞、助演女優賞(妻アリシアを演じたジェニファー・コネリー)と主要5部門を獲得し、現在ではアメリカ映画の名作の1本と位置付けられている。

 ナッシュ博士がこの映画のおかげで学界の範疇を越えた一般的知名度を得たのは間違いない。
 ただし、ナサーが徹底的に綿密な取材を行い、数年間をかけてものした大部の伝記に比べると、映画版は大向こう受けするようかなり簡略化されたストーリーになっている。

 ナッシュ博士の人生がわれわれの胸を打つのは、彼が長年に渡る統合失調症の発作とともに、自らの同性愛嗜好もカミングアウト、そのスキャンダルが発覚して、一時大学を追われた過去まで赤裸々に告白しているところにある。
 妻アリシアとの結婚は互いにある程度の打算に基づいた選択だったが、ナッシュ博士の病状が悪化するにつれて経済的にも困窮し、アリシアのほうから離婚せざるを得なかった。

 この映画化版ではそうしたネガティヴな事実が完全にカットされており、統合失調症に陥ったナッシュ博士をアリシアが献身的に支え続けた、という大衆受けしやすいメロドラマに作り替えられている。
 ナッシュ博士が見る幻覚も伝記に書かれた内容とはまったく異なっており、これは恐らく、軍事目的の研究を強いられたあげくの被害者だった側面を強調するためだろう。

 しかし、原作のあとがきを読むと、著者のナサーもナッシュ博士本人もこの映画化を大いに喜び、とりわけ主役のクロウには絶大な賛辞を贈っている。
 半生の大胆な改変や細かな事実関係の食い違いより、アメリカ映画史に残る偉人として描かれたことに満足したということか、と考えると、ノンフィクションの書き手の端くれとしては少々複雑な気分になるが。

 お勧め度は一応B。

 ナッシュ博士と妻アリシアさんには、ここに謹んで哀悼の意を表します。

(2001年 アメリカ=ユニヴァーサル・ピクチャーズ、ドリーム・ワークス/日本配給UIP 2002年 135分)

 ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2015リスト
 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

37『あ・うん』(1989年/東宝)B
36『ローン・サバイバー』(2014年/米)A
35『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)B
34『真昼の決闘』(1952年/米)A
33『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年/米)B
32『運動靴と赤い金魚』(1997年/伊蘭)A
31『ルームメイト』(2013年/東映)C
30『モテキ』(2011年/東宝)C
29『神様のカルテ』(2011年/東宝)C
28『バットマン』(1989年/米)B
27『バックドラフト』(1991年/米)B
26『イーグル・アイ』(2008年/米)A
25『そこのみにて光輝く』(2014年/東京テアトル他)A
24『サイドウェイ』(2004年/米)A
23『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男』(2012年/仏)C
22『メトロ42』(2012年/露)C
21『リベンジ・マッチ』(2013年/米)C
20『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』(2013年/米)C
19『ボーン・アルティメイタム』(2007年/米)B
18『ボーン・スプレマシー』(2003年/米)B
17『ボーン・アイデンティティー』(2002年/米)B
16『ザ・タワー 超高層ビル大火災』(2012年/韓)B
15『ハードエイト』(1996年/米)A
14『刑事コロンボ 第38話「ルーサン警部の犯罪」』(1976年/米)B
13『刑事コロンボ 第37話「さらば提督」』(1976年/米)B
12『ワイルド・ビル』(1995年/米)C
11『鷲と鷹』(1969年/米)C
10『プロフェッショナル』(1966年/米)C
9『戦略大作戦』(1970年/米)C
8『スリー・キングス』(1999年/米)B
7『里見八犬伝』(1983年/角川春樹事務所)C
6『パシフィック・リム』(2013年/米)A
5『大脱出』(2013年/米)B
4『追悼のメロディ』(1976年/仏)A
3『フリック・ストーリー』(1975年/仏、伊)B
2『ロボコップ』(2014年/米)B
1『アメリカン・ハッスル』(2013年/米)B
月刊PHP4月号
ヒューマン・ドキュメント
生涯精進の江戸竿師
中根喜三郎
定価205円