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『レッドクリフPartT』
2009年01月4日(日)
Red Cliff PartT


 ネットのレビューにおける批判的な意見の大半は、原作のイメージとの違いを指摘している。気持ちはわかるけれど、この映画の場合、そういうことを云々しても始まらないでしょう。
 わが国で最も一般的な『三国志』は吉川英治による翻案版だろうが、これ自体『三国志演義』という14世紀の小説を書き改めた作品である。3世紀頃に著された純然たる歴史書『三国志』が原版ではないのだ。
 日本人はこの物語が好きで、その後も柴田錬三郎、陳舜臣、北方謙三、宮城谷昌光ら、大家による様々な翻案ヴァージョンが出版されてきた。そこではもちろん、それぞれの作家が独自の解釈を試みている。
 さらに、吉川三国志を原案とした横山光輝による劇画版もあって、こちらも日本では長年親しまれている古典≠ニ言ってよかろう。
 歴史的事実、及び劉備・曹操・呂布・孔明ら主要登場人物の根幹となるキャラクターは不変であるにせよ、オリジナル性を尊重しているか否か、などという議論は不毛でしかない。
 大体、主役の周瑜を演じたトニー・レオンですら、この映画への出演のオファーを受けるまで、「実は『三国志』を読んだことがなかったんですよ」と言っているくらいなのだ。
 そうした前提を踏まえ、杓子定規なことを言っても仕方がないと重々承知した上での感想だが、それほど面白い映画ではなかった
 最大の弱点は、合戦シーンばかりに時間を割き、人間ドラマをじっくり見せていないことに尽きる。
 スポーツ観戦になぞらえていえば、ひいきの選手やチームが圧勝しているワンサイド・ゲームのようなものだ。最初のうちこそ大喜びし、一方的な展開に安心していられるが、すぐに退屈してしまって、しまいには終わりまで見ずに飲みに行きたくなる
 壮大なセット、大量の人馬、手の込んだCGなどは、確かに結構な見物ではある。が、例えば、周瑜に狩りに連れ出された孫権が虎と向かい合う場面、ここは古めかしいカットバックで誤摩化しているだけ。孫権と虎は一度も同じフレームで映されていない
 虎の顔が曹操に重なり、これを弓で射抜いた孫権は、ついに赤壁で対決することを決意する――という大変重要なところなのに、画面が切り替わっているうちに虎が死んでしまう
 昨年ヒットした『花より男子ファイナル』にも似たような場面があった。南海の孤島でクマに遭遇したつくしが、右ストレート一発でクマを撃退するのである。つくしがパンチを出した次の瞬間、スクリーンにはクマのケツが映っていたのだった。
 そういうふうに肝心のディテールを疎かにするから、作品全体のリアリティーが損なわれるのだ。CGの鳩を飛ばし、馬をクスリで倒し、そこに飛び交う矢を合成すれば迫力が出るというものではないぞ。猛獣もちゃんと映せ、ジョン・ウー…グルルル、ワン!
 プロ野球の試合に例えりゃ10対0。大した満足感は得られません。
 …『ハッピーフライト』と二部興行をやっていたシャンテシネ、本日14時5分の回はぎゅうぎゅう詰めの満員でしたが。