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『ザ・ファイター』
2011年04月7日(木)
The Fighter


 ボクシング映画は嫌いではないが、実際のボクシングほど好きでもない。フィクションでは絶対に再現できない一線というものを最も強く感じるスポーツだから。
 一世を風靡した『ロッキー』(1976年)にしても、あれだけヒットしたのはボクシングそのものを描いたからではなく、ボクシングに託して失われかけたアメリカン・ドリームの復活を謳い上げたからだろう。
 本作『ザ・ファイター』もその系譜に属する。『ロッキー』はスラム街をうろつくイタリア系の取り立て屋だったが、こちらの主人公ミッキー・ウォードはアイルランド系の道路工員。
 陰気で無口。貧乏でマザコン。シュガー・レイ・レナードと一度だけ戦い、一度だけダウンを奪った(実際はスリップと判定された)種違いの兄ディッキーが世界で最大のヒーローだ。
 マネージャー役の母親は無理なマッチメークを押し付け、トレーナーとして頼りにする兄貴はクラック中毒。いつまでも彼らの言いなりになっていてはいけないとわかっていて、父親も独立して大手ジムの契約選手になるよう勧めているが、ミッキーはどうしても母と兄の影響から逃れることができない。
 そんなミッキーがいかにして一人前の男になったか、映画は70年代のドキュメンタリー映画のようなタッチで追ってゆく。テーマは再生と自立だ。ミッキーひとりだけでなく、9・11やリーマン・ショックで自信を失ったアメリカ人の。
 実話ネタであり、『ロッキー』のアポロ・クリードのような敵役は存在しない。ミッキーと恋人との葛藤、兄や母との対立に悩む描写が多く、ファイトのディテールがほとんど描かれていない構成もいささかまどろっこしく感じられる。
 アカデミー助演男優賞を受賞したクリスチャン・ベールも、うまいことはうまいが、個人的には作り過ぎが鼻に突く。ただ、これはぼくが実際のボクサーから話を聞き、彼ら独特の「壊れよう」を知っているからで、一般の観客にとっては十分説得力のある演技かもしれない。
 しかし、それでも、クラックを断った兄とともに再起を図り、世界タイトルマッチに臨むクライマックスには感動する。
 スタッフと俳優は間違いなくベストを尽くしたのだ。本物のボクサーが本当に試合に勝とうとするように。敬意を表したい。80点。

 丸の内ピカデリーほかで8日まで公開中

 ※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

 2011劇場公開映画鑑賞リスト
13『トゥルー・グリット』(米=パラマウント)85点
12『冷たい熱帯魚』(NIKKATSU)90点
11『悪魔を見た』(韓)75点

10『アパートの鍵貸します』(米)80点
9『英国王のスピーチ』(英/豪)80点
8『ソーシャル・ネットワーク』(米=コロンビア)85点
7『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』(東宝)70点
6『台北の朝、僕は恋をする』(台/米)75点
5『さくら、さくら-サムライ化学者 高峰譲吉の生涯-』(アステア)60点
4『ウォール・ストリート』(米=FOX)80点
3『洋菓子店コアンドル』(アスミック・エース)85点
2『白夜行』(ギャガ)70点
1『アンストッパブル』(米=FOX)70点


※紺=新作(日本初公開の旧作を含む)
※茶=旧作