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『新宿インシデント』(セルBD)
2018年01月7日(日)
新宿事件、Shinjuku Incident


 昨年12月に初めて台湾へ行き、昔試写会で見たことを思い出したジャッキー・チェン主演の香港・日本合作映画。
 なぜ突然この作品の記憶が蘇ったかというと、「台南派」と呼ばれる台湾出身のヤクザグループが登場し、中国本土から入国してきた一派と激しい抗争を展開する内容だったから。

 試写会での感想は、当時〈アサ芸&ENTAMEモバイル〉という有料携帯サイトで連載していた『映画スコアブック』というコラムの2009年5月1日付記事で書いている。
 以下、当時の原稿内容に修正、注釈を加えて再録する。

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 今年はジャッキー・チェンの日本デビュー30周年なんだそうである。
 我が国初上陸作品は『ドランクモンキー酔拳』(1978年)。

 以来、笑えるアクションスターとして不動の地位を築いてきたジャッキーが、節目の年に選んだのが東映テイストたっぷりのヤクザ映画だ。
 時代は90年代前半、ジャッキー演じる主人公は恋人を追って中国から抜け出した不法入国者。

 流れ着いた歌舞伎町でようやく再会してみたら、彼女は日本人ヤクザと結婚して一児の母になっていた。
 国境警備兵を殺したために帰国できないジャッキー、飲食店の皿洗い程度の不法労働では大した銭にならないと、変造テレカから本格的裏稼業に手を染めてゆく。

 そうした最中、ジャッキーは元恋人の亭主に依頼され、日本での滞在許可証と引き換えに彼の親分の暗殺を引き受ける。
 亭主役はこのテの役にうってつけの加藤雅也、ジャッキーが撃ち殺す加藤の仇敵には倉田保昭で、この往年のカンフースターも63歳、ちなみにジャッキーも54歳と、時の流れを感じさせる組み合わせですな。

 歌舞伎町を仕切る台湾人ヤクザ・台南派との抗争も制し、一時は裏稼業から身を退くも、やがて苦労をともにした仲間が麻薬の商売に走り…という筋立ては、任侠映画や実録シリーズの巨匠・笠原和夫のシナリオにそっくり。
 長ドスがきらめき、赤ペンキそのものの鮮血が飛び散るド迫力と安っぽさスレスレの演出もニクイ。

(注1:血の色は試写会での印象で、今回再見したブルーレイ版ではかなり純度の高い鮮血に見える。
 中国と台南のヤクザ同士が大乱闘を繰り広げるクライマックスでは臓物も出てくるのでR15指定となった。)

 昔の東映ヤクザ映画なら、ジャッキーが菅原文太、加藤が松方弘樹、彼らにからむデカの竹中直人はさしずめ成田三樹夫あたりの役どころか。
 ヤクザたちをアゴで動かす政界の黒幕が長門裕之が出てくると、つい夫人の南田洋子の問題がよぎり、一時現実に引き戻されましたが。

(注2:当時、南田洋子が認知症であることを、夫の長門がテレビ番組でカミングアウト。
 長門が南田を甲斐甲斐しく介護する様子が全国に放送され、大きな話題となっていた最中だった。)

 それにしても、この映画に出てくる中国人や台湾人はオソロシイ。
 とくに台湾から渡来した台南派は、自分たちの経営する飲み屋には「中国人お断り」という貼り紙をしておいて、縄張りを荒らしている中国人を見つけるや、顔を切り刻み、片腕を切り落とすなど、あまりに残酷。

 ジャッキーは2008年北京五輪閉会式のフィナーレに登場するなど、香港映画界では大変な親中派として知られる。
 一方、歯に衣着せぬ政治的問題発言も多く、先月も「中国は自由過ぎると混乱するから管理してもらうことが必要」などと言い出して猛烈な批判を浴びていた。

 日本進出30周年にこういう作品を世に問うのもジャッキーのアジアへのメッセージか…ト、いろいろな見方ができるので、オヤジ同士で見て酒の肴にしましょう。
 歌舞伎町のロケは無許可で断行したゲリラ撮影だそうで、この香港映画人たちのパワーもスゴイねエ。

(注3:「ゲリラ撮影」は当時の宣伝用リリースに書かれていた話だが、実際には東京都の許可を得てロケ撮影している。
 ブルーレイのメイキング映像にはその様子が収められていて、これも一見の価値あり。)

 採点は納得の70点。

(注4:80点でもよかった。
 再見のオススメ度もA。)

(2009年 香港、日本 119分)

 ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
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1『日の名残り』(1993年/英、米)A