counter
www.akasaka-cycle.com
font size       [old site
 home   blog   works   pick-up   others   profile   bbs 
『ロード・ウォリアーズ 破滅と絶頂』アニマル・ウォリアー
2017年12月25日(月)
The Road Warriors: Danger,Death,and The Rush of Wrestling


 〈スター・ウォーズ〉が映画界を席巻していた1980年代、プロレス界で大ブームを巻き起こしていたタッグ・チームがロード・ウォリアーズである。
 アメリカではAWA、NWA(のちのWCW)、WWF、日本では全日本、新日本と、当時のメジャー団体を渡り歩いてメインイベントを張った。

 著者アニマル・ウォリアーの本名がジョー・ロウリネイティスであることは覚えていたが、リトアニア人だったことは本書を読んで初めて知った。
 ハイスクール時代から通っていたジムでマイク・ヘグストランドことホーク・ウォリアーと知り合い、バーの用心棒をしていたころ、バーテンをやっていたエディ・シャーキーにプロレスの世界へスカウトされる(シャーキーがバーテンだったことも初めて知った)。

 ぼく自身がプロレスにハマっていた時代の回顧録でもあり、記憶に残っている個性豊かなレスラーが次から次へと登場するのが実に楽しい。
 ジム・クロケット・ジュニアやバーン・ガニアに「きょうはおまえらの負けだ」と通告されてアニマルが憤慨したり、ホークとレックス・ルーガーが女を巡って殴り合ったり、つい吹き出してしまうエピソードが頻出する。

 いま振り返れば、ロード・ウォリアーズはプロレスが世間に対してケーフェイを守っていた古き佳き時代の最後のスーパースターでもあった。
 しかし、興行やビジネスの形態が急速に近代化するにつれ、PPVやグッズの売り上げで大金を稼げるようになった半面、プロレスのあり方そのものも変わらざるを得なくなってゆく。

 業界最大の団体WWF(ワールド・レスリング・フェデレーション)を率いるビンス・マクマホン・ジュニアは、スポーツ団体に課される税金逃れのため、「われわれがやっているプロレスはスポーツではなくショーだ」とカミングアウト。
 世界自然保護基金(ワールド・ワイルド・ライフ・ファンド)との名称権争いにも敗れて、長年使用してきたWWFという団体名をWWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)に変更した。

 ウォリアーズも次第に落ち目になってインディー団体を転戦、アニマルとホークもたびたび諍いを起こすようになる。
 ホークが新日本で佐々木健介(パワー・ウォリアー)と組み、ヘル・レイザーズとして売り出していたころ、アニマルには事前に一言の断りもなく、2年間も口を利かなかった、というエピソードが苦い。

 終盤ではステロイドを常用していたレスラーの訃報が相次ぎ、ついにはホークも死んでしまう。
 そして、アニマルは一時代を築いたレスラー仲間ともども、それまでの人生からは考えられなかった転職を決意した。
 
 プロレスのオールドファンには一気に読める。
 そういうことだったのか! と驚かされる真相も山盛り(わかったからってどうだってんだ、と言ってはいけない)。
 
(発行:東邦出版 協力:アンドリュー・ウィリアム・ライト 翻訳:児島修 初版第1刷:2011年6月14日 定価:1905円=税別)

 2017読書目録

35『セルジオ・レオーネ 西部劇神話を撃ったイタリアの悪童』クリストファー・フレイリング著、鬼塚大輔訳(2002年/フィルムアート社)
34『細木数子 魔女の履歴書』溝口敦(2008年/講談社)
33『外道クライマー』宮城公博(2016年/集英社インターナショナル)
32『長谷川恒男 虚空の登攀者』佐瀬稔(1998年/中央公論新社)
31『狼は帰らず アルピニスト・森田勝の生と死』佐瀬稔(1998年/中央公論新社)
30『神々の山嶺』劇画版/夢枕獏作、谷口ジロー画(2006年/集英社)
29『もっと厭な物語』文藝春秋編(2014年/文藝春秋)
28『厭な物語』文藝春秋編(2013年/文藝春秋)
27『厭な映画』山崎圭司、岡本敦史、映画秘宝編集部(2015年/洋泉社)
26『ペドロ・マルティネス自伝』ペドロ・マルティネス&マイケル・シルバーマン著、児島修訳(2017年、東洋館出版)
25『山怪 山人が語る不思議な話』田中康弘(2015年/山と渓谷社)
24『鷲は舞い降りた[完全版]』ジャック・ヒギンズ著、鈴木光訳(初出1975年、1997年/早川書房)
23『深夜プラス1[新訳版]』ギャビン・ライアル著、鈴木恵訳(初出1965年、2016年/早川書房)
22『女の一生』ギ・ド・モーパッサン著、新庄嘉章訳(初出1883年/新潮社)
21『ホライズン』小島慶子(2017年/文藝春秋)
20『ロバート・アルドリッチ大全』アラン・シルヴァー、ジェイムズ・ウルシーニ著、宮本高晴訳(2012年/国書刊行会)
19『最後の冒険家』石川直樹(2008年/集英社)
18『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』フランク・ブレイディー著、佐藤耕士訳(2015年/文藝春秋)
17『モンティ・パイソンができるまで/ジョン・クリーズ自伝』ジョン・クリーズ著、安原和見訳(2016年/早川書房)
16『勝ち過ぎた監督/駒大苫小牧 幻の三連覇』中村計(2016年/集英社)
15『旅人の表現術』角幡唯介(2016年/集英社)
14『漂流』角幡唯介(2016年/新潮社)
13『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介(2011年/集英社)
12『百田尚樹『殉愛』の真実』宝島取材班他(2015年/宝島社)
11『夫のちんぽが入らない』こだま(2017年/扶桑社)
10『1984年のUWF』柳澤健(2017年/文藝春秋)
9『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介(2010年/集英社) 
8『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一(2016年/中央公論新社)
7『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(2016年/角川書店)
6『うしろの正面だあれ』海老名香葉子(初出1985年/金の星社)
5『この世界の片隅に』こうの史代(2008年/双葉社)
4『これが広島弁じゃ!』灰谷謙二監修(2016年/洋泉社)
3『薬物とセックス』溝口敦(2016年/新潮新書)
2『ミナトのせがれ』藤木幸夫(2004年/神奈川新聞社)
1『誘拐』本田靖春(初出1977年/ちくま文庫)