counter
www.akasaka-cycle.com
font size       [old site
 home   blog   works   pick-up   others   profile   bbs 
『ワイルド・アパッチ』(NHK-BS)
2017年11月24日(金)
Ulzana's Raid


 前項『レヴェナント:蘇えりし者」と同様、開拓民とアメリカ先住民との戦いに素材を採った異色の西部劇。
 中学か高校のころ、地上波テレビで吹替版を見ていて、あらすじだけは記憶していたが、これほど酷薄かつ重厚なテーマを持っている作品だということは、今回ノーカット字幕版を見て初めて知った。

 開巻、アメリカ騎兵隊の兵士たちがアリゾナ州ローウェル砦で野球に興じている場面から映画は始まる。
 ブルース・デイヴィソン扮するガーネット・デ・ビュイン中尉がストライク、ボールの判定を間違え、捕手を務める軍曹(リチャード・ジェッケル)が不満をぶちまけるところがユーモラスで面白い。

 そこへ馬で駆けつけた伝令の兵士が、アパッチ族の戦士ウルザナ(ホアキン・マルティネス)がインディアン居留地から脱走したという知らせをもたらし、デ・ビュイン中尉が討伐隊の指揮を取ることになる。
 ここにアパッチ族に詳しい参謀役として参加するのが本篇の主人公、バート・ランカスター演じる年老いたガンマンのマッキントッシュ、アパッチ族の協力者ケ・ニ・テイ(ホルヘ・リューク)。

 ウルザナとその一味は極めて凶暴で、開拓民の住居を襲っては男はなぶり殺し、女はレイプした上で切り刻み、子供を殺すこともためらわない。
 女の死体から心臓を取り出してキャッチボールのように投げ合ったり、縛り上げた男の目を潰し、彼が飼っていた愛犬の尻尾を口に突っ込んだり、劇場公開から40年以上経ったいま見ても目を背けたくなるようなシーンが頻出する。

 監督はこの時代のアクション映画の巨匠ロバート・アルドリッチ、オリジナル脚本を書いたのはピーター・フォンダが監督デビューした傑作『さすらいのカウボーイ』(1971年)で知られるアラン・シャープ。
 アパッチ族の残酷描写はやりすぎのような気もするが、ウルザナは実在の人物であり、実際に起こった開拓民襲撃事件が元になっているという(このあたりも『レヴェナント』とよく似ている)。

 アルドリッチとシャープの狙いは単に先住民の凶暴さや残忍さを強調することにあるのではなく、彼らを追い詰めた騎兵隊とアメリカ政府にも批判的な視線を注ぐ。
 当初はアパッチ族を殺すことばかりに血眼で、彼らの死体を放置して省みもしなかったデ・ビュインが、先住民の女を妻にしているマッキントッシュに諭され、手厚く埋葬するようになるあたりは、定石的なシナリオとはいえ、人間的な温かみと説得力を感じさせる。

 クライマックスではアパッチ族の急襲を受けたマッキントッシュが重傷を負い、孤立したウルザナとアメリカ人に協力するケ・ニ・テイとの一騎打ちになる。
 このアパッチ族同士の対決の結末を、あえて見せようとしないアルドリッチの演出が実に素晴らしい。

 シナリオライターのシャープは本作を書くにあたり、ジョン・ウェインがインディアンを殺しては頭の皮を剥ぐ『捜索者』(1956年)に大きな影響を受けたという。
 一方で、アルドリッチの研究書『ロバート・アルドリッチ大全』(2012年、国書刊行会)には、本作のストーリーは明らかにベトナム戦争に対する暗喩的批判であり、ここに出てくるアパッチ族もベトコンのメタファーでもあると指摘されている。

 同書に収録されているアルドリッチの証言によれば、本作の実質的主人公はウルザナとケ・ニ・テイで、本来ならマッキントッシュは脇役として描くべきだった、とある。
 しかし、当時のアルドリッチは自分のスタジオを倒産させたばかりで、本作は一介のフリーとして手がけた出直しの第1作、大スター・ランカスター主演の映画として企画しなければ、ユニバーサルが金を出してくれなかったのだそうだ。

 もっとも、かつてアルドリッチと組んだ『アパッチ』(1954年)でアパッチ族を演じ、18年ぶりにアルドリッチに呼ばれたランカスターはこの役に相当入れ込んでいたようで、文字通り入魂の名演技。
 死を覚悟した表情のストップモーションで終わるラストシーンは、ランカスターのフィルモグラフィーの中でも、『家族の肖像』(1976年)と並ぶ幕切れのひとつと言っていい。

 オススメ度A。



(1972年 アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ、MCA 105分)

 ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2017リスト
 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

96『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年/米)B
95『ザ・コンサルタント』(2016年/米)B
94『バニシング・ポイント』(1971年/米)A
93『突撃隊』(1962年/米)A
92『上海から来た女』(1947年/米)B
91『偉大なるアンバーソン家の人々』(1942年/米)B
90『デストラップ 死の罠』(1982年/米)A
89『眠れぬ夜のために』(1985年/米)B
88『ジュラシック・ワールド』(2015年/米)B
87『シン・ゴジラ』(2016年/東宝)A
86『何者』(2016年/東宝)A
85『怒り』(2016年/東宝)A
84『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969年/東映)B
83『エベレスト』(2015年/米、英、氷)B
82『運命を分けたザイル』(2003年/英)A
81『マラソンマン』(1976年/米)B
80『日曜日には鼠を殺せ』(1964年/米)B
79『トム・ホーン』(1980年/米)B
78『ギャンブラー』(1971年/米)A
77『サウスポー』(2015年/米)B
76『レスラー』(2008年/米)A
75『スーサイド・スクワッド』(2016年/米)C
74『エルム街の悪夢』(1984年/米)B
73『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年/東宝)C
72『エヴェレスト 神々の山嶺』(2016年/東宝)C
71『SCOOP!』(2016年/東宝)C
70『極道の妻たち』(1986年/東映)D
69『チャイナタウン』(1974年/米)A
68『シチズンフォー/スノーデンの暴露』(2014年/米、独)A
67『アイスブレイカー 超巨大氷山崩落』(2016年/露)C
66『ヴィジット』(2015年/米)C
65『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年/米)A
64『アントマン』(2015年/米)B
63『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年/米)B
62『インクレディブル・ハルク』(2008年/米)C
61『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年/米)B
60『大いなる決闘』(1976年/米)B
59『ワイルド・ギース』(1978年/英、瑞)A
58『鷲は舞いおりた』(1977年/アメリカ)C
57『デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー』(2007年/米)B
56『ブレードランナー/ファイナル・カット』(1982、2007年/米)A
55『ターザン:REBORN』(2016年/米)B
54『二ツ星の料理人』(2015年/米)B
53『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B
52『サイレント・ランニング』(1972年/米)B
51『アンドロン』(2015年/伊、英、馬)D
50『アウトバーン』(2016年/米、独)B
49『カラーパープル』(1985年/米)A
48『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015年/米)A
47『超高層プロフェッショナル』(1979年/米)C
46『特攻大作戦』(1967年/米)B
45『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(2015年/米)B
44『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』(2005年/米)D
43『エミリー 悪夢のベビーシッター』(2015年/米)C
42『チリ33人 希望の軌跡』(2015年/智、哥)B
41『人生は小説よりも奇なり』(2014年/米)C
40『ファミリー・プロット』(1976年/米)A
39『グッド・ネイバー』(2016年/米)C
38『エージェント・ウルトラ』(2015年/米)B
37『デッドプール』(2016年/米)B
36『ちはやふる−下の句−』(2016年/東宝)B
35『ちはやふる−上の句−』(2016年/東宝)B
34『クリーピー 偽りの殺人』(2016年/松竹、アスミックエース)D
33『ザ・コントロール』(2016年/米)D
32『ダイヤルM』(1998年/米)B
31『ランス・アームストロング/ツール・ド・フランス7冠の真実』(2013年/米)A
30『ラスト・スキャンダル あるハリウッドスターの禁じられた情事』(2014年/米)C
29『ヘイトフル・エイト』(2015年/米)C
28『マギー』(2015年/米)B
27『三匹の侍』(1964年/松竹)C
26『女ガンマン 皆殺しのメロディ』(1971年/英)B
25『さらば愛しき女よ』(1975年/米)B
24『バーディ』(1984年/米)B
23『父 パードレ・パドローネ』(1977年/伊)B
22『カンバセーション…盗聴…』(1974年/米)B
21『マン・オン・ワイヤー』(2008年/英、米)B
20『ザ・ブリザード』(2016年/米)C
19『クール・ランニング』(1993年/米)B
18『完全なるチェックメイト』(2015年/米)B
17『ルーム』(2015年/加、愛)B
16『イット・フォローズ』(2015年/米)C
15『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年/米)C
14『ザ・コア』(2003年/米)D
13『怪談』(1965年/東宝)B
12『切腹』(1962年/松竹)A
11『「ベガルタ」〜サッカー、震災、そして希望〜』(2016年/英)A
10『ユーズド・カー』(1980年/米)B
9『突破口!』(1973年/米)A
8『目撃』(1997年/米)B
7『ブラック・スキャンダル』(2015年/米)B
6『シャーク・プリズン 鮫地獄女囚大脱獄』(2015年/米)C
5『ゾンビシャーク 感染鮫』(2015年/米)C
4『ロボシャークvs.ネイビーシールズ』(2015年/米)B
3『シェルター』(2010年/米)C
2『僕だけがいない街』(2016年/ワーナー・ブラザース)C
1『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A
新潮45 12月号
祝、新人王獲得!
中日・京田陽太
「プロ1年目は
出来過ぎでした」
定価880円