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別冊映画秘宝『厭な映画』山本圭司、岡本敦史他
2017年10月13日(金)


 2015年秋、いまやホラー映画の古典となった『悪魔のいけにえ』(1974年)の公開40周年記念版の劇場公開、ブルーレイ発売に合わせて発行された別冊映画秘宝シリーズの1冊。
 最近はすっかり映画関連のニュースに疎くなってしまい、40周年記念版を見たのは1年後のWOWOW放送で、この本の存在を知ったのも今年になってからだった。

 この種の企画は映画ライターの知識と熱量が成否を分けるのだが、さすが映画秘宝、巻頭で堂々たる『悪魔のいけにえ』論を展開している山崎圭司をはじめ、寄稿者たちがわれこそは「厭な映画」の権威だと言わんばかりの熱筆を振るっている。
 小野寺生哉の「語られざる田舎ホラー大全科」、加藤麻也の「コドモは狂っている」(この種の古典『ザ・チャイルド』はもちろん含む)、ナマニクの「ガイアナ人民寺院の悲劇」、中原昌也が東宝東和のパラサイコ・シリーズを分析した「オカルト映画も狂っていた!」、さらに狼座妖一郎がピエル・パオロ・パゾリーニ惨殺事件の真相に迫った一文など、いずれ劣らぬ力作ぞろい。

 『コンプライアンス 服従の心理』(2012年)、『イット・フォローズ』(2015年)など、映画秘宝でなければ触れないだろう、最近の地味な小品をしっかりとマメにチェックしているところもさすが。
 ここにデルモンテ平山あたりを復活させていれば、このシリーズの創刊号『エド・ウッドとサイテー映画の世界』(1995年)に匹敵する出来栄えに達していたかもしれない。

 ただし、「厭な映画」とは言っても、本当に二度と見たくないほど後味の悪い作品ばかり並んでいるわけではない。
 巻頭の『悪魔のいけにえ』にしてから、あまりのスプラッターぶりとレザーフェースの突き抜けたキャラクターに、嫌悪感より爽快感が感じられたほど(実際、アメリカでも初公開当時から、歓声をあげながら見ている若いファンが多いという)。

 そもそも、「厭な」感じはどのような映画も本来的に持ち合わせている隠し味のようなもの。
 見終わったあともその隠し味が喉に引っかかって嚥下できず、いつまでも記憶の片隅に引っかかり、時を経るにつれて脳内で忘れがたい映画の1本になってゆく、というのが映画を見る楽しみでもある。

 最後に、この本で取り上げられていない最近の個人的「厭な映画」ワースト5を挙げておこう。
 いずれも純然たるオカルトやホラーではなく、国際的評価も非常に高いんだけど、ぼく自身はもう一度見たいとは思わない映画ばかりです。

『白いリボン』(2009年)
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(2011年)
『リアリティー』(2012年)
『グッドナイト・マミー』(2014年)
『父の秘密』(2015年)

(発行:洋泉社 洋泉社MOOK 2015年10月9日 定価:1500円=税別)

 2017読書目録

26『ペドロ・マルティネス自伝』ペドロ・マルティネス&マイケル・シルバーマン著、児島修訳(2017年、東洋館出版)
25『山怪 山人が語る不思議な話』田中康弘(2015年/山と渓谷社)
24『鷲は舞い降りた[完全版]』ジャック・ヒギンズ著、鈴木光訳(初出1975年、1997年/早川書房)
23『深夜プラス1[新訳版]』ギャビン・ライアル著、鈴木恵訳(初出1965年、2016年/早川書房)
22『女の一生』ギ・ド・モーパッサン著、新庄嘉章訳(初出1883年/新潮社)
21『ホライズン』小島慶子(2017年/文藝春秋)
20『ロバート・アルドリッチ大全』アラン・シルヴァー、ジェイムズ・ウルシーニ著、宮本高晴訳(2012年/国書刊行会)
19『最後の冒険家』石川直樹(2008年/集英社)
18『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』フランク・ブレイディー著、佐藤耕士訳(2015年/文藝春秋)
17『モンティ・パイソンができるまで/ジョン・クリーズ自伝』ジョン・クリーズ著、安原和見訳(2016年/早川書房)
16『勝ち過ぎた監督/駒大苫小牧 幻の三連覇』中村計(2016年/集英社)
15『旅人の表現術』角幡唯介(2016年/集英社)
14『漂流』角幡唯介(2016年/新潮社)
13『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介(2011年/集英社)
12『百田尚樹『殉愛』の真実』宝島取材班他(2015年/宝島社)
11『夫のちんぽが入らない』こだま(2017年/扶桑社)
10『1984年のUWF』柳澤健(2017年/文藝春秋)
9『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介(2010年/集英社) 
8『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一(2016年/中央公論新社)
7『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(2016年/角川書店)
6『うしろの正面だあれ』海老名香葉子(初出1985年/金の星社)
5『この世界の片隅に』こうの史代(2008年/双葉社)
4『これが広島弁じゃ!』灰谷謙二監修(2016年/洋泉社)
3『薬物とセックス』溝口敦(2016年/新潮新書)
2『ミナトのせがれ』藤木幸夫(2004年/神奈川新聞社)
1『誘拐』本田靖春(初出1977年/ちくま文庫)