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『山怪 山人が語る不思議な話』田中康弘
2017年08月11日(金)


 一昨年の夏に出版されて以来、2年で10万部を超えるベストセラーとなっている。
 ただし、いわゆる山の怪談≠並べたオカルト本やトンデモ本の類ではない。

 タイトルの「山怪」とは、日本全国の山間部でマタギや猟師たちによって語り伝えられている怪異譚≠フこと。
 河童や山姥の登場する民話、雪男やヒバゴンが目撃されたといった伝説の類とは違い、山の中での生活、仕事、それらを引っくるめた人生や人間社会に根差した語りの文化≠セ。

 狐に化かされた、火玉(人魂、狐火)を見た、子供が神隠しにあった、迷うようなところではないのに道を見失って同じところをグルグル回っていた、などなど。
 ホラー映画のような怖さは感じさせないが、根源的な日本の山が持つ神秘性、山がそこに住む人たちの心に与える影響の数々の傍証が列挙されており、なかなか興味深い。

 著者はマタギや山間部の文化をテーマに取材を続けているフリーランスのカメラマン。
 本作の取材は私などが想像する以上に大変だったらしく、地元の役所に相談して人を紹介してもらい、車を運転して現地に行っても旅館や民宿もなく、河原にテントを張って寝泊まりしながら話を聞いて回っていたという。

 すると、寝ている最中、テントの周りを歩き回っている足音が聞こえてくる。
 さては狐か熊か、熊だったら食われてはかなわないと思い、慌てて外に出てみると、そこには何もいなかった、という取材中の不気味な体験も綴られている。

 頭が下がるフィールドワークの労作。
 もう少し面白く読ませるための構成上の工夫があってもよかったのではないか、という気もしたが、こういう素朴な趣の本には余計な演出など不要でしょう。

(発行:山と渓谷社 初版第1刷:2015年6月16日 第14刷:2017年5月15日 定価:1200円=税別)

 2017読書目録

24『鷲は舞い降りた[完全版]』ジャック・ヒギンズ著、鈴木光訳(初出1975年、1997年/早川書房)
23『深夜プラス1[新訳版]』ギャビン・ライアル著、鈴木恵訳(初出1965年、2016年/早川書房)
22『女の一生』ギ・ド・モーパッサン著、新庄嘉章訳(初出1883年/新潮社)
21『ホライズン』小島慶子(2017年/文藝春秋)
20『ロバート・アルドリッチ大全』アラン・シルヴァー、ジェイムズ・ウルシーニ著、宮本高晴訳(2012年/国書刊行会)
19『最後の冒険家』石川直樹(2008年/集英社)
18『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』フランク・ブレイディー著、佐藤耕士訳(2015年/文藝春秋)
17『モンティ・パイソンができるまで/ジョン・クリーズ自伝』ジョン・クリーズ著、安原和見訳(2016年/早川書房)
16『勝ち過ぎた監督/駒大苫小牧 幻の三連覇』中村計(2016年/集英社)
15『旅人の表現術』角幡唯介(2016年/集英社)
14『漂流』角幡唯介(2016年/新潮社)
13『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介(2011年/集英社)
12『百田尚樹『殉愛』の真実』宝島取材班他(2015年/宝島社)
11『夫のちんぽが入らない』こだま(2017年/扶桑社)
10『1984年のUWF』柳澤健(2017年/文藝春秋)
9『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介(2010年/集英社) 
8『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一(2016年/中央公論新社)
7『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(2016年/角川書店)
6『うしろの正面だあれ』海老名香葉子(初出1985年/金の星社)
5『この世界の片隅に』こうの史代(2008年/双葉社)
4『これが広島弁じゃ!』灰谷謙二監修(2016年/洋泉社)
3『薬物とセックス』溝口敦(2016年/新潮新書)
2『ミナトのせがれ』藤木幸夫(2004年/神奈川新聞社)
1『誘拐』本田靖春(初出1977年/ちくま文庫)
サンデー毎日
10月1日号
「カープ新井貴浩
独占激白!」後編
黒田との契り
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9月24日号
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独占激白!」前編
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