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『美女と野獣』(IMAX・3D)
2017年05月29日(月)
Beauty and the Beast


 ミュージカルは誰かに誘われでもしない限り自分から見に行くほうではなく、大評判を取った『レ・ミゼラブル』(2012年)も出来栄えの良さがわかればわかるほどかえって冷めてしまった記憶がある。
 だから、いまヒットしているこの映画もスルーするつもりだったのだが、カップルや家族連ればかりではなく、男女問わず中高年のリピーターが増えていると聞いて興味が湧いた。

 開巻、城に村中の美女を集めて悦に入っていた美男子の王子(ダン・スティーヴンス)が、わがままで無慈悲な性格を魔女(ハティ・モラハン)に責められ、醜い野獣に変えられる。
 魔女はその場に一輪の薔薇を残し、「この薔薇が散るまでに真実の愛を手に入れられなければ、おまえは永遠に野獣の姿のままとなるだろう」と王子に通告。

 さらに、村人の記憶からも城と王子の記憶を消し去り、哀れ野獣は世間から断絶された天涯孤独の身に。
 それからしばらくのち、パリから村にやってきたオルゴール職人モーリス(ケヴィン・クライン)が幽霊屋敷と化した王子の城に迷い込み、その娘ベル(エマ・ワトソン)が城へ父を探しにやってきて野獣と巡り合う。

 ここまでの展開はお約束通りで、歌やダンスにもそれほど目を見張るほどのものはないが、魔女によって時計や燭台に変えられた執事や召使の見せるギャグが面白い。
 父の身代わりとして城の囚人となったベルが野獣と初めてディナーをともにすることになると、オルガンや衣装箪笥の夫婦、ポットとコーヒーカップの母子も「呪いを解くチャンス」とハッスルして様々な秘技(というか何というか)を披露。

 このあたりは『オズの魔法使い』(1939年)を彷彿とさせる楽しさ(おれも古いね)で、アメリカ製ミュージカル・ファンタジーの古き佳き伝統も感じさせる。
 やがてベルと野獣が心を通い合わせるようになるくだりもふたりの心情がよく伝わってくるが、ベル役のワトソンが好演しているだけにもっとじっくり見せてもよかった(野獣はCGなので上手いとは言いにくいけどね)。

 クライマックスはベルに横恋慕した軍人ガストン(ルーク・エヴァンス)が村人を煽動して野獣の城に突撃。
 彼らを迎え撃つ家具の使用人たちが、ここでまたチャンチャンバラバラの大暴れをして見せるのが楽しい(オルガンの鍵盤マシンガンには大笑いしました)。

 ただし、率直に言って、この映画のドラマツルギーには納得しかねる。
 この物語は最初から最後まで「絶対的統治者」としての魔女に支配されており、野獣の生死も村人たちの心も、すべて魔女の手の中にある。

 ベルが野獣を愛するようになるのは彼女個人の積極的な行為だとしても、野獣がその愛を成就させて人間に戻れるかどうかはあくまで魔女の判断ひとつにかかっている。
 だったらもっと早く野獣を王子に戻してやってもよかったはずで、ガストンとの対決で瀕死の重傷を負うまで傍観しているというのは作劇上の欠陥≠ナはないか。
 
 最後の最後で魔女が絶大な力を発揮するシーンには、「そんなことができるんならさっさと王子にかけた呪いを解いておけよな」と言いたくなった。
 そうすれば、ベルも父親のモーリスもあんなひどい目に遭わず、もっとスムーズに村人全員とハッピーエンドを迎えられたはずなのだ。

 また、野獣と敵対するガストンの扱い方も疑問。
 ミュージカルだからエンディングでみんなと一緒にダンスでも踊るのかと思ったら、こいつひとりだけほったらかしにされたまま、クライマックスで寝返ったゲイの恋人のル・フウ(ジョシュ・ギャッド)だけがのうのうと味方ヅラをしているのだから解せない。

 まあ、そういうツッコミどころも面白さの一部、と思えばいいのかもしれませんが。 
 採点は80点

(2017年 アメリカ=ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ 129分)

TOHOシネマズ日劇・渋谷・新宿・日本橋、新宿バルト9などで公開中

※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

 2017劇場公開映画鑑賞リスト
1『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015年/伊)75点