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『ランス・アームストロング/ツール・ド・フランス7冠の真実』
2017年05月13日(土)
The Armstrong Lie


 ランス・アームストロングのドーピング・スキャンダルを描いた映画『疑惑のチャンピオン』(2015年)のWOWOW初放送に合わせ、抱き合わせで初放送されたドキュメンタリー映画。
 しかし、いまひとつツッコミが足りない『疑惑…』より、こちらのほうがよっぽど見応えがある。

 監督アレックス・ギブニーは『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』(2005年)でアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞ノミネート、『「闇」へ』(2007年)で同賞受賞を果たした米ドキュメンタリー映画界の巨匠。
 1960〜70年代に『ローリング・ストーン』誌で活躍したフリー・ジャーナリストを描いた『GONZO〜ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて〜』(2008年)でも評判を取った(ぼくは面白くなかったけど)。

 本作はそもそも、それだけの立派な実績を持つギブニーがアームストロングのストーリーを真実と信じ、2009年のツール・ド・フランスに復帰した姿を追って、感動的なドキュメンタリーにするつもりで製作に取りかかった作品だった。
 アームストロングが敗れたときには本人以上に落胆し、「あんたのドキュメンタリーを台無しにしてしまったな」と、ほかならぬアームストロングに慰められていた姿が多数の周辺関係者に目撃されているという。

 その矢先、ドーピング・スキャンダルが表面化、アームストロング自身もオプラ・ウィンフリーのトーク番組で告白に踏み切ったことにより、本作は視点も論点も180°異なるドキュメンタリーに作り変えざるを得なくなったのだ。
 一連の経緯についてはギブニー自身がキャロリン・フロストによるインタビュー記事(2014年)で語っている通りだが、前代未聞の方向転換を余儀なくされながら、よくぞこういう完成形にたどり着けたものだと感心する。

 内容はすでに知っていること、伝えられていることがほとんどだったが、それでも、単独インタビューに応じてドーピングの内幕を語るアームストロングの独白は実に面白い。
 チームの監督だったヨハン・ブリュイネールをはじめ、アームストロングを告発した元チームメート、フロイド・ランディス、ジョージ・ヒンカピー、フランキー・アンドリューとベッツィー夫人のインタビューなど、スポーツ・ジャーナリズムにおいても貴重な映像が満載である。

 ジャーナリズムの側からも、最初に批判記事を書いたサンデー・タイムスのデヴィッド・ウォルシュ、『シークレット・レース/ツール・ド・フランスの知られざる内幕』(2012年)の著者タイラー・ハミルトン&ダニエル・コイルらが登場。
 アイルランド人の元ロードレーサーでジャーナリスト、デビュー作『ラフ・ライド』でサイクル・スポーツ批判の草分け的存在として知られるポール・キメイジが、会見場でアームストロングと激しくやり合う貴重な場面も収められている。

 終盤にはアームストロングに引導を渡したUSADA(全米アンチドーピング機構)の会長トラビス・タイガートも一連の調査の経緯について証言。
 ランディスやヒンカピーに対し、アームストロングに関する情報を提供してくれれば、永久追放になるところを半年間に減刑≠オてやるという取引を持ちかけたことを認めた一方で、「私はアームストロングにも同じ条件を提示した」と明かしている。

 ただし、アームストロングは本作の最後で、「タイガートはそんなことなど言っていない」とこれを否定。
 当時のUCI会長ハイン・フェルブルッゲンもインタビューには応じておらず、「まだ全体像が明らかになったわけではない」というアームストロングの言葉通り、どこか割り切れない、モヤモヤした印象を残して映画は終わる。

 最も興味深いのは、ウソをついているときも、真相を告白しているときも、インタビューにおけるアームストロングの表情がまったく変わらないことだ。
 彼はいつ、どのような状況においても、「いま自分がしゃべっていることこそが唯一無二の真実なのだ」と信じ切っているようで、それが過去の発言とどれだけ矛盾していてもまるで気にかけていないように見える。

 いまではあまり使われなくなった諺に「天才と気狂いは紙一重」という言葉があるが、アームストロングこそはスポーツ界におけるその生きた見本かもしれない。
 オススメ度A。

(2013年 アメリカ=ソニー・ピクチャーズ・クラシックス/日本劇場未公開 テレビ初放送=WOWOW 2017年4月30日 123分)

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 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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1『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A