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『モンティ・パイソンができるまで/ジョン・クリーズ自伝』
2017年04月29日(土)
So,Anyway…


 『空飛ぶモンティ・パイソン』(1969〜74年)はぼくが一番ハマったテレビのコメディ番組で、2000年に発売されたDVD-BOXは隅から隅まで舐め尽くすように見た(画質が劣化しているのでブルーレイ化を希望する)。
 そのパイソンズの中心メンバー、ジョン・クリーズが75歳にして初の自伝を執筆したとなれば、これは読まないわけにはいかない。

 ある程度予想してはいたが、実際のクリーズはパイソンとしての強面のキャラクターや破壊的な芸風とは裏腹に、大変ナイーヴで内向的な性格をしていて、コントひとつ作るにも大変綿密に計算していた。
 そんなクリーズの作品に対する取り組み方は、あらゆる表現活動に相通ずる普遍的、本質的示唆に富んでいる。

 また、コメディを志すきっかけが小中学校時代に教えを受けた教師の人間像、そうした教師とのやりとりにあった、というくだりも大変興味深い。
 例えば、癇癪持ちの小学校の校長先生、ミスター・トルソンが怒りだす様子を、クリーズはこのように描写する。

〈われらが校長は(中略)腹が立ってくると顔がどんどん赤くなっていくのだ。そもそも彼の顔はふだんから見事なピンク色で、そのうえにてかてかにはげたきれいな頭がのっている。しかし怒りが募ってくると、それが驚くほどはっきりと段階的に濃くなっていき、しまいには暗褐色に至るのだ。
 (中略)赤みが増強する最初の兆候が現れると、それを途中で止めることはできなかった。癇癪がそれじたいで生命を持ってしまい、かなりの大声を出さなければ解消されないのだ〉(163ページ)

 この校長こそ、クリーズが『パイソン』で演じた一部のキャラクター、『フォルティ・タワーズ』(1975〜79年、これも面白かった!)のバジルの原型であることは明らかだ。
 また、中学時代になると、聖書を暗記するのが大嫌いで礼拝を無断欠席したクリーズは、謹厳実直な学校監督に欠席した理由を聞かれ、こう言い訳している。

〈ロウアー・レッドランド・ストリートを歩いていて、警察署の向かいにある警察官宿舎の大きな建物の前を通っているとき、最上階の窓が開いたと思ったらなべひとつの熱い油をだれかがぶちまけて、それを頭からかぶってしまったので、帰宅してシャワーを浴びて着替えてこなくてはならなかったからです。
(監督)「きみは、それを私に信じろというのかね」
(クリーズ)「監督、これは本当にあったことなんです」。〉(137ページ)

 この「突拍子もない作り話」は、監督にも生徒たちにもまったくウケず、「教室内はしんと静まりかえった」。
 しかし、この一件を「自信がついてきた、というより自分の足で立ち始めたことの現れだった」とクリーズは自己評価し、のちに大真面目な顔をしてとんでもない話を延々と続け、しまいには自分で自分の話に激昂してしまう、というクリーズ一流のキャラクター造形へと発展させてゆくのだ。

 非常に教わるところが多く、ゲラゲラ笑いながら読める稀有なコメディアンの自叙伝。
 しかし、邦題にある通り「モンティ・パイソンができるまで」で終わっており、あの番組やパイソンズに関する裏話がほんのちょっぴりしかないのが非常に残念(続編を希望する)。



(発行:早川書房 翻訳:安原和見 初版:2016年12月25日 定価:3400円=税別
 原語版発行:2014年)

 2017読書目録

16『勝ち過ぎた監督/駒大苫小牧 幻の三連覇』中村計(2016年/集英社)
15『旅人の表現術』角幡唯介(2016年/集英社)
14『漂流』角幡唯介(2016年/新潮社)
13『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介(2011年/集英社)
12『百田尚樹『殉愛』の真実』宝島取材班他(2015年/宝島社)
11『夫のちんぽが入らない』こだま(2017年/扶桑社)
10『1984年のUWF』柳澤健(2017年/文藝春秋)
9『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介(2010年/集英社) 
8『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一(2016年/中央公論新社)
7『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(2016年/角川書店)
6『うしろの正面だあれ』海老名香葉子(初出1985年/金の星社)
5『この世界の片隅に』こうの史代(2008年/双葉社)
4『これが広島弁じゃ!』灰谷謙二監修(2016年/洋泉社)
3『薬物とセックス』溝口敦(2016年/新潮新書)
2『ミナトのせがれ』藤木幸夫(2004年/神奈川新聞社)
1『誘拐』本田靖春(初出1977年/ちくま文庫)
サンデー毎日
10月1日号
「カープ新井貴浩
独占激白!」後編
黒田との契り
定価380円
サンデー毎日
9月24日号
「カープ新井貴浩
独占激白!」前編
4番、連覇、引退
定価380円