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『旅人の表現術』角幡唯介
2017年03月18日(土)


 2011〜15年ごろ、角幡唯介が様々な媒体で行った対談、書いた書評やエッセイなどを1冊に編んだ本。
 著者の探検に関するポリシーはもちろん、読書遍歴やそこから培われた文学観も詳細に語られており、ぼくのような愛読者にとっては大変興味深い内容となっている。

 最も考えさせられたのはやはり沢木耕太郎との対談。
 沢木さんは角幡ノンフィクションの代表作『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(2011年)、『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(2012年)をどのように読んだのか、両者のファンとしては大変気になるところだったから。

 しかし、結論から言うと、沢木さんの厳しい批評はいささか杓子定規に過ぎやしないか、と感じた。
 例えば『空白の五マイル』について、沢木さんは1回目の旅は歴史的意義が中途半端で、2回目の旅は作品全体の主題から遊離した個人的体験談にとどまっている、と批判している。

 それはそうかもしれないが、そもそも『空白の五マイル』は世界の探検史に一石を投じる以前に、早稲田大学探検部に在籍していた無名の若者が、自分の人生にケリをつけるために単身チベットの奥地に乗り込んだ、という行動そのものがわれわれ読者の心を揺さぶる作品なのだ。
 沢木さんが指摘している通り、確かに2回目の探検では地図の「空白」に挑むという当初の目的はどこかへ行ってしまい、最後はとにかく自分が助かるための脱出行になってしまうのだけれど、その落差と急展開こそがこの本の最大の魅力であり、読みどころであり、小説的予定調和に収まらない傑作ノンフィクションたり得ている所以でもある。

 そういう作品を沢木さんの言う「かくあるべきノンフィクション規範」のようなものに当てはめてしまったら、角幡作品でしか味わえない妙味も失われてしまうだろう。
 ぼくには、絶対に作為の許されないノンフィクションやルポルタージュとはいえ、読者を惹きつけられなければいくら完成度だけ高くても意味がない、という信条があるのでそう考えるのだが。
 
(発行:集英社 第1刷:2016年6月30日 定価:1800円=税別)

 2017読書目録

14『漂流』角幡唯介(2016年/新潮社)
13『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介(2011年/集英社)
12『百田尚樹『殉愛』の真実』宝島取材班他(2015年/宝島社)
11『夫のちんぽが入らない』こだま(2017年/扶桑社)
10『1984年のUWF』柳澤健(2017年/文藝春秋)
9『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介(2010年/集英社) 
8『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一(2016年/中央公論新社)
7『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(2016年/角川書店)
6『うしろの正面だあれ』海老名香葉子(初出1985年/金の星社)
5『この世界の片隅に』こうの史代(2008年/双葉社)
4『これが広島弁じゃ!』灰谷謙二監修(2016年/洋泉社)
3『薬物とセックス』溝口敦(2016年/新潮新書)
2『ミナトのせがれ』藤木幸夫(2004年/神奈川新聞社)
1『誘拐』本田靖春(初出1977年/ちくま文庫)
サンデー毎日
10月1日号
「カープ新井貴浩
独占激白!」後編
黒田との契り
定価380円
サンデー毎日
9月24日号
「カープ新井貴浩
独占激白!」前編
4番、連覇、引退
定価380円