counter
www.akasaka-cycle.com
font size       [old site
 home   blog   works   pick-up   others   profile   bbs 
『うしろの正面だあれ』海老名香葉子
2017年01月14日(土)


 初代林家三平の妻、海老名美どり・泰葉・九代目林家正蔵・二代目林家三平の母にして、児童文学作家として名高い海老名香葉子のデビュー作。
 本書はインタビュー原稿の資料として読んだのだが、大変面白かったので、未読の方にはぜひお勧めしたい。

 前項『この世界の片隅に』と同じく戦時下における庶民の暮らしぶりが温かなタッチでに描かれており、1991年には劇場用アニメとして映画化された(ぼくは未見)。
 こちらの舞台は東京荒川区の下町で、著者が生まれ育った和竿職人の家族のドラマである。

 児童小説の形は取られているものの、ぼくが仕事の取材で本書の主要登場人物に聞いたところ、ここに書かれていることは概ね事実だという。
 著者の親が営んでいた本所竪川の釣竿屋は1945年3月9日、東京大空襲によって周囲の町もろとも焼失してしまった。

 その悲劇に至るまでの数年間、幼年期の著者が過ごした東京の下町の生活が子供にもわかるようにほのぼのと、大人にとっては胸に染み入るようにしっとりと綴られている。
 最後に家族を待ち構えている運命があまりに残酷だけに、前半で生き生きと、情緒豊かに描かれた光景がかえって痛切に感じられてならない。
 
 著者自身は小学5年で沼津へ学童疎開に出されていたため、大空襲の脅威にさらされずにすんだ。
 しかし、ひとりだけ生き残った兄の様子と、彼の口から語られる言葉が、『この世界の片隅に』と同様、失われたものの大きさをひしひしと感じさせる。

(発行:金の星社 フォア文庫 定価:534円=税別
 第1刷:1990年11月 第11刷:1992年3月
 単行本発行:1985年)
新潮45 12月号
祝、新人王獲得!
中日・京田陽太
「プロ1年目は
出来過ぎでした」
定価880円