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『アグルーカの行方』角幡唯介
2016年10月17日(月)


 副題は『129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』。

 偉そうに他人様の作品を云々できる資格も実績もないのだが、こういう本を読むと、もうお手上げ、とてもおれのような門外漢がイチャモンをつけられる世界ではないと平伏したくなる。
 著者は早稲田大学探検部OBで、本作を書いた時点ではノンフィクション作家ではなく探検家と言ったほうがふさわしい。

 日本が大震災に見舞われた2011年3月下旬、彼は極地探検家のパートナーとふたりで、カナダ北極圏のレゾリュート湾からベイカー湖まで、1600qを徒歩で踏破する旅に出た。
 目的は、はるか昔、同じルートを辿ったイギリス探検隊の足跡を追い、謎に包まれている全滅の経緯と原因を探るためだ。

 1845年、当時の英雄的探検家だったジョン・フランクリンは、ヨーロッパとアジアを結ぶ幻の航路を見つけるべく、総勢129人を率いてイギリスを出発、消息を絶っていた。
 その後、欧米の著名な探検家が現地に足を運び、フランクリン隊の遭難の原因を探っているが、著者がいくら数多の文献を読み漁っても、結局のところ、はっきりしたことはわからない。

 ただ、そうした数々の資料の中に、フランクリン探検隊にはイヌイットから彼らの尊称の一種「アグルーカ」(大股で歩く男)と呼ばれた人物がいた、という記述があった。
 イヌイットにそこまで讃えられたのは何者なのか、そしてそのアグルーカはいかにして生き延びようとしたのか、著者は自分の足で歩いて確かめようとしたのである。

 探検のゴールが見えてきた終盤、「息をのむような美しい光景」を前にして、著者はこう書いている。

〈私たちがそこにいることを知っている人間は、この世に一人も存在しなかった。
 私にはそれが素晴らしいことのように思えた。
 だからこそ私たちは目の前の風景と直結し、重なりあい、溶けこむことができていた。
 人間と接触した過去と、接触する未来が、時間的にも距離的にも遠く離れすぎていて、現在の自分からは想像もできないという、まさにそこのことによってもたらされる隔絶感の中で私たちの旅は続けられていたのだ。
 もしかしたら自由とはそういうものなのかもしれなかった。〉
(366ページ/ワンセンテンスごとの改行は筆者)

 こういう文章は本当の冒険を経験している人間でなければ書けない。
 冒険をしていれば誰にでも書ける文章でもない。

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