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『紙の月』(WOWOW)
2015年10月28日(水)


 『クヒオ大佐』(2009年)、『パーマネント野ばら』(2010年)、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)と、見るたびに感動させられてきた吉田大八の監督最新作。
 本作ではヒロインの宮沢りえから新たな魅力を引き出し、これまでとは趣の異なる大人のエンターテインメントに仕上げて見せた。

 原作は角田光代のベストセラー小説で、りえが演じる主人公は横領に手を染める銀行の契約社員。
 モデルは言うまでもなく、1981年に社会を騒然とさせた三和銀行オンライン詐欺事件である。

 現実の事件でも容疑者が美人であり、「好きな人のためにやりました」というセリフが大衆の支持を受け、当時の流行語にまでなった。
 本作のりえも、若い学生(池松壮亮)と不倫の関係に陥り、彼に貢ぐために横領を重ねるにつれ、吹っ切れたように自由な女になってゆく過程が大変説得力に満ちている。

 肉欲や金銭欲に取り憑かれているというより、自分の内なる衝動に突き動かされるまま、限りある人生を思う存分楽しもうとするりえの姿は、ある種清々しく、爽やかでさえある。
 とりわけ、自分の悪行を暴いた先輩銀行員・小林聡美と対峙して、こんなことがいつまでも続くわけはないとわかっていた、でもやりたかった、後悔はしていない、と静かに語る場面が印象的だ。

 この映画の魅力を一言で語るとしたら、水のような「透明感」だろう。
 非常に生々しく、ドロドロした、人間の「業」の物語なのに、りえはそういう「業」を追求すればするほど、白い肌がいよいよ白く、透き通るような美しい女になってゆく。

 人間と欲望との関係は何なのか。
 欲望の赴くまま、他人を騙し、ひとときの快楽を貪るその有り様こそ、実はもっとも人間らしい姿とは言えないか、そんなことを考えさせられる映画である。

 敵役の小林聡美、脇で面白い存在感を出している大島優子のキャラクターは原作にはない役どころで、このふたりが作品全体に絶妙のアクセントを加えていることも付記しておきたい。
 『クヒオ大佐』の満島ひかりや安藤サクラ、『パーマネント野ばら』の小池栄子もそうだったけれど、吉田大八は主役だけでなく、脇に置いた女優のポテンシャルを引き出すのがまことにうまい監督である。

 弱点があるとしたら、この監督の作品の常として、いささかオチが弱いことだろう。
 あえてオチらしいオチをつけていないからえも言われぬ余韻が残る、という見方もできるが。

 お勧め度はA。
 
(2014年 松竹 126分)
 
 ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2015リスト
 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

108『8月の家族たち』(2013年/米)B
107『ファーナス 訣別の朝』(2013年/米)B
106『大いなる勇者』(1973年/米)A
105『ヒマラヤ 運命の山』(2010年/独)C
104『シービスケット』(2003年/米)A
103『名探偵登場』(1976年/米)C
102『沈黙の官能』(1976年/伊)B
101『誰よりも狙われた男』(2014年/英、米、独)B
100『脳男』(2013年/東宝)D
99『大巨獣ガッパ』(1967年/日活)C
98『最後の猿の惑星』(1973年/米)B
97『猿の惑星・征服』(1972年/米)B
96『OK牧場の決闘』(1957年/米)C
95『パリは燃えているか』(1966年/米、仏)A
94『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年/東宝)B
93『ひめゆりの塔』(1995年/東宝)C
92『ひめゆりの塔』(1982年/芸苑社、東宝)D
91『野獣暁に死す』(1968年/伊)C
90『復讐無頼 狼たちの荒野』(1968年/伊、西)B
89『血と砂』(1965年/東宝)C
88『日本のいちばん長い日』(1967年/東宝)A
87『人間魚雷 あゝ特別攻撃隊』(1968年/東映)C
86『狙撃者』(1971年/英)B
85『オープニング・ナイト』(1978年/米)A
84『父の秘密』(2013年/墨)C
83『狂気の行方』(2009年/米、独)C
82『ブルージャスミン』(2013年/米)A
81『さよなら渓谷』(2013年/ファントム・フィルム)A
80『僕の彼女はサイボーグ』(2008年/GAGA)B
79『日本一のショック男』(1971年/東宝)C
78『日本一のワルノリ男』(1970年/東宝)C
77『日本一のヤクザ男』(1970年/東宝)C
76『日本一の断絶男』(1969年/東宝)B
75『地球防衛未亡人』(2014年/トラヴィス)C
74『サンブンノイチ』(2014年/KADOKAWA)A
73『ガキ帝国』(1981年/ATG)B
72『祭りの準備』(1976年/ATG)A
71『青春の殺人者』(1975年/ATG)A
70『他人の顔』(1966年/東宝)B
69『武士道無残』(1960年/松竹)B
68『天井桟敷の人々』(1945年/仏)A
67『未来は今』(1994年/米)C
66『ある日どこかで』(1980年/米)B
65『テス』(1979年/伊、仏)A
64『血まみれギャングママ』(1970年/米)C
63『脱出』(1972年/米)A
62『けんか空手 極真拳』(1975年/東映)C
61『関東緋桜一家』(1972年/東映)B
60『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
59『現代やくざ 与太者仁義』(1969年/東映)C
58『暗黒街最大の決斗』(1963年/東映)C
57『ヒッチハイク』(1977年/伊)B
56『裏切りの荒野』(1967年/伊)C
55『ミッション』(1986年/英)B
54『生きてこそ』(1993年/米)B
53『ダブル・ジョパディー』(1999年/米)B
52『レ・ミゼラブル』(2012年/米)A
51『トランセンデンス』(2014年/米)C
50『ダイバージェント』(2014年/米)C
49『狼男アメリカン』(1981年/米)B
48『グレートレース』(1965年/米)B
47『海底二万哩』(1954年/米)B
46『救命艇』(1944年/米)B
45『ゴジラ』(1984年/東宝)C
44『怪獣総進撃』(1968年/東宝)C
43『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年/東宝)C
42『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966年/東宝)C
41『リアリティー』(2012年/伊、仏)C
40『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(2014年/諾、瑞、丁)C
39『まごころを君に アルジャーノンに花束を』(1968年/米)C
38『ビューティフル・マインド』(2001年/米)B
37『あ・うん』(1989年/東宝)B
36『ローン・サバイバー』(2014年/米)A
35『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)B
34『真昼の決闘』(1952年/米)A
33『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年/米)B
32『運動靴と赤い金魚』(1997年/伊蘭)A
31『ルームメイト』(2013年/東映)C
30『モテキ』(2011年/東宝)C
29『神様のカルテ』(2011年/東宝)C
28『バットマン』(1989年/米)B
27『バックドラフト』(1991年/米)B
26『イーグル・アイ』(2008年/米)A
25『そこのみにて光輝く』(2014年/東京テアトル他)A
24『サイドウェイ』(2004年/米)A
23『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男』(2012年/仏)C
22『メトロ42』(2012年/露)C
21『リベンジ・マッチ』(2013年/米)C
20『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』(2013年/米)C
19『ボーン・アルティメイタム』(2007年/米)B
18『ボーン・スプレマシー』(2003年/米)B
17『ボーン・アイデンティティー』(2002年/米)B
16『ザ・タワー 超高層ビル大火災』(2012年/韓)B
15『ハードエイト』(1996年/米)A
14『刑事コロンボ 第38話「ルーサン警部の犯罪」』(1976年/米)B
13『刑事コロンボ 第37話「さらば提督」』(1976年/米)B
12『ワイルド・ビル』(1995年/米)C
11『鷲と鷹』(1969年/米)C
10『プロフェッショナル』(1966年/米)C
9『戦略大作戦』(1970年/米)C
8『スリー・キングス』(1999年/米)B
7『里見八犬伝』(1983年/角川春樹事務所)C
6『パシフィック・リム』(2013年/米)A
5『大脱出』(2013年/米)B
4『追悼のメロディ』(1976年/仏)A
3『フリック・ストーリー』(1975年/仏、伊)B
2『ロボコップ』(2014年/米)B
1『アメリカン・ハッスル』(2013年/米)B