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『最後の猿の惑星[エクステンデッド版]』(WOWOW)
2015年09月13日(日)
Battle for the Planet of the Apes


 旧〈猿の惑星〉シリーズのタイムトラベルの輪を完結させ、大団円を飾った最終作。
 前作『猿の惑星・征服』(1972年)と同様、劇場公開当時は「シリーズを継続・完結させたという以上の意味や価値はほとんどない」と断じられ、その評価が定着してしまった不幸な映画でもある。

 主人公は前作『征服』で猿の反乱を先導し、マルコムXばりのリーダーとなったチンパンジーのシーザー。
 演ずるはロディ・マクドウォールで、第1作『猿の惑星』(1968年)以降、シリーズ5作を通じて出演したただひとり(だと思う)の俳優である。

 シリーズ最終作の本作は前作からさらに数百年が経過した2670年、オランウータンの立法者がシーザーの功績を振り返るところから始まる。
 このオランウータンはなんと、特殊メイクを施したジョン・ヒューストン。

 時は遡って2003年、前作の反乱で人類の支配する社会を滅ぼしたシーザーは、人類と共存するコミュニティーを築き、妻リサとの間にひとり息子コーネリアスをもうけていた。
 この息子はシリーズ第1作『猿の惑星』(1968年)でマクドウォール自身が演じ、宇宙飛行士テイラー(チャールトン・ヘストン)の味方となったあのコーネリアスだろう。

 しかし、コーネリアスは映画の前半、かねて父シーザーと対立していたゴリラのアルドー将軍(クロード・エイキンス)に秘かに殺されてしまう。
 そのアルドー一派がクーデターを起こしたところへ、廃墟と化したロサンジェルスの地下に潜んでいた人間たちがコミュニティーに向かって侵攻を開始、ここに猿と人間との最終決戦≠ェ始まる。

 ところが、猿側は原始時代に近い暮らしをしており、人間側もろくな武器がない上、身体的にも長年の猿との戦争のおかげで疲弊しているため、両者の戦いぶりはまことにモタモタしており、見ていて情けない限り。
 故・青田昇さんがよく言っていた「イザリとチンバのどつき合い」という言葉を久しぶりに思い出した。

 この猿対人間の最終戦争のシケた描写は、当時泥沼化していたベトナム戦争に対する痛烈なアイロニーだ。
 前作と相変わらず20世紀FOXが経営難で、製作資金が大幅に削られているという台所事情もあっただろうが。
 
 この戦争の最中、アルドー一派はコミュニティーの人間たちをひとまとめにして檻に閉じ込める。
 これは第二次世界大戦中、アメリカ政府が在米日本人を強制収容したゲットーの暗喩で、このくだりには日本人を彷彿させる東洋人が映っている。

 猿はなぜ人間による支配を拒み、自ら新たなコミュニティーを作って人間との共存を図ったのか。
 人間は同じ種族である人間同士が平気で殺し合うのに対し、猿(=知的哺乳類)は決して猿を殺さないからだ。

 人間は人間を殺すが、猿は猿を殺さない。
 作品中、何度もリフレインされるこの言葉は、キリスト教における人間の原罪を強調したものだ。

 終盤、アルドーがこっそりコーネリアスを殺していたことが発覚し、それまでアルドーに付き従っていた猿たちが離反。
 アルドーは怒りに燃えたシーザーに追われ、木の上に逃げながら、枝から手を滑らせて墜落、あっけなく死んでしまう。

 「猿も木から落ちる」という格言そのままのこのオチは、原罪を犯した猿はもはや猿ではないということを示している。
 そして、コーネリアスを殺したアルドーに続いて、そのアルドーを死に追いやったシーザーもまた原罪を背負った。

 こうして猿は人間になったのだ。
 これは、黒人や東洋人がようやく白人と同じ権利を持つ人間として認められながら、そのことがまた新たに様々な摩擦や軋轢を生む契機となった、という現代のアメリカ社会そのものを表す顛末でもあった。

 ラスト、ふたたびヒューストン演じる立法者が登場し、カメラがパンすると、周囲では猿と人間の子供たちが一緒になって立法者の話に聞き入っている。
 カメラが彼らの傍らに立つシーザーの石像が映し出し、その顔をクローズアップで捉えると、石像の目から涙がこぼれるところでジ・エンド。

 このシーザー像は、のちにティム・バートンが監督した『PLANET OF THE APES 猿の惑星』(2001年)のラストシーンに出てくる石像の元ネタとなったものだろう。
 映画としての出来映えは決してよくないが、いまになってみると様々なことを考えさせてくれる貴重な佳品である。

 お勧め度はB。
 
(1973年 アメリカ=20世紀FOX 96分/劇場公開版&DVD版 87分)
 
 ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2015リスト
 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

97『猿の惑星・征服』(1972年/米)B
96『OK牧場の決闘』(1957年/米)C
95『パリは燃えているか』(1966年/米、仏)A
94『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年/東宝)B
93『ひめゆりの塔』(1995年/東宝)C
92『ひめゆりの塔』(1982年/芸苑社、東宝)C
91『野獣暁に死す』(1968年/伊)C
90『復讐無頼 狼たちの荒野』(1968年/伊、西)B
89『血と砂』(1965年/東宝)C
88『日本のいちばん長い日』(1967年/東宝)A
87『人間魚雷 あゝ特別攻撃隊』(1968年/東映)C
86『狙撃者』(1971年/英)B
85『オープニング・ナイト』(1978年/米)A
84『父の秘密』(2013年/墨)C
83『狂気の行方』(2009年/米、独)C
82『ブルージャスミン』(2013年/米)A
81『さよなら渓谷』(2013年/ファントム・フィルム)A
80『僕の彼女はサイボーグ』(2008年/GAGA)B
79『日本一のショック男』(1971年/東宝)C
78『日本一のワルノリ男』(1970年/東宝)C
77『日本一のヤクザ男』(1970年/東宝)C
76『日本一の断絶男』(1969年/東宝)B
75『地球防衛未亡人』(2014年/トラヴィス)C
74『サンブンノイチ』(2014年/KADOKAWA)A
73『ガキ帝国』(1981年/ATG)B
72『祭りの準備』(1976年/ATG)A
71『青春の殺人者』(1975年/ATG)A
70『他人の顔』(1966年/東宝)B
69『武士道無残』(1960年/松竹)B
68『天井桟敷の人々』(1945年/仏)A
67『未来は今』(1994年/米)C
66『ある日どこかで』(1980年/米)B
65『テス』(1979年/伊、仏)A
64『血まみれギャングママ』(1970年/米)C
63『脱出』(1972年/米)A
62『けんか空手 極真拳』(1975年/東映)C
61『関東緋桜一家』(1972年/東映)B
60『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
59『現代やくざ 与太者仁義』(1969年/東映)C
58『暗黒街最大の決斗』(1963年/東映)C
57『ヒッチハイク』(1977年/伊)B
56『裏切りの荒野』(1967年/伊)C
55『ミッション』(1986年/英)B
54『生きてこそ』(1993年/米)B
53『ダブル・ジョパディー』(1999年/米)B
52『レ・ミゼラブル』(2012年/米)A
51『トランセンデンス』(2014年/米)C
50『ダイバージェント』(2014年/米)C
49『狼男アメリカン』(1981年/米)B
48『グレートレース』(1965年/米)B
47『海底二万哩』(1954年/米)B
46『救命艇』(1944年/米)B
45『ゴジラ』(1984年/東宝)C
44『怪獣総進撃』(1968年/東宝)C
43『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年/東宝)C
42『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966年/東宝)C
41『リアリティー』(2012年/伊、仏)C
40『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(2014年/諾、瑞、丁)C
39『まごころを君に アルジャーノンに花束を』(1968年/米)C
38『ビューティフル・マインド』(2001年/米)B
37『あ・うん』(1989年/東宝)B
36『ローン・サバイバー』(2014年/米)A
35『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)B
34『真昼の決闘』(1952年/米)A
33『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年/米)B
32『運動靴と赤い金魚』(1997年/伊蘭)A
31『ルームメイト』(2013年/東映)C
30『モテキ』(2011年/東宝)C
29『神様のカルテ』(2011年/東宝)C
28『バットマン』(1989年/米)B
27『バックドラフト』(1991年/米)B
26『イーグル・アイ』(2008年/米)A
25『そこのみにて光輝く』(2014年/東京テアトル他)A
24『サイドウェイ』(2004年/米)A
23『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男』(2012年/仏)C
22『メトロ42』(2012年/露)C
21『リベンジ・マッチ』(2013年/米)C
20『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』(2013年/米)C
19『ボーン・アルティメイタム』(2007年/米)B
18『ボーン・スプレマシー』(2003年/米)B
17『ボーン・アイデンティティー』(2002年/米)B
16『ザ・タワー 超高層ビル大火災』(2012年/韓)B
15『ハードエイト』(1996年/米)A
14『刑事コロンボ 第38話「ルーサン警部の犯罪」』(1976年/米)B
13『刑事コロンボ 第37話「さらば提督」』(1976年/米)B
12『ワイルド・ビル』(1995年/米)C
11『鷲と鷹』(1969年/米)C
10『プロフェッショナル』(1966年/米)C
9『戦略大作戦』(1970年/米)C
8『スリー・キングス』(1999年/米)B
7『里見八犬伝』(1983年/角川春樹事務所)C
6『パシフィック・リム』(2013年/米)A
5『大脱出』(2013年/米)B
4『追悼のメロディ』(1976年/仏)A
3『フリック・ストーリー』(1975年/仏、伊)B
2『ロボコップ』(2014年/米)B
1『アメリカン・ハッスル』(2013年/米)B