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『日本のいちばん長い日』
2015年08月16日(日)


 先日、初めて岡本喜八版(1967年製作)を鑑賞したからには、劇場公開中のこちらもチェックしておかねばと思い、散髪のあとで時間ができたきょうの午後、さっそく新宿ピカデリーへ見に行ってきた。
 16時55分からの回は最前列や端っこまでほぼ満席で、新宿という場所柄か、意外に若い世代の観客も多かった。

 喜八版に比べると、出来映えは一長一短。
 しっかり作ってあると感心させられた半面、これはないんじゃないの? と首を傾げたくなった部分も少なくない。

 喜八版ではいきなりニュース映画風に幕が開き、1945年8月14日未明、鈴木内閣のポツダム宣言受諾の打電から昭和天皇の玉音放送までの24時間が「日本のいちばん長い日」になった、とナレーションが流れる。
 そこへ画面いっぱいに筆書きのタイトルがドーンとかぶさる、という昔の東宝の大作映画ならではの有無をいわせぬオープニングだった。

 一方、この原田眞人監督版は、ポツダム宣言より3カ月以上前の4月、早期戦争終結を望む天皇に、鈴木貫太郎が組閣の大命を降下されるところからストーリーが始まる。
 政権を陸軍に握らせたい東条英機に食ってかかられ、これに鈴木が真っ向から反論するくだりが興味深い。

 総理に就任した鈴木は、最も慎重に選ぶべき陸軍大臣に、自ら本土決戦派の阿南惟幾を推薦。
 この阿南がポツダム宣言受諾、終戦の詔書作成に当たり、散々鈴木を悩ませたことは喜八版にも描かれている通りだが、実はこのふたり、天皇の下で鈴木が侍従長、阿南が侍従武官を務めていたころから気脈を通じ合った仲でもあったのだ。

 そうした人間関係の綾や機微については、喜八版ではほのめかされている程度で、ほとんど触れられていない。
 原田版ではこの天皇、鈴木、阿南の3人の関係をシナリオの縦軸に据え、荘重な人間ドラマとして「日本のいちばん長い日」に至る経過を描いてゆく。
 
 喜八版と原田版のキャスティングを比較すると、鈴木=笠智衆・山ア努、天皇=先代松本幸四郎・本木雅弘、阿南=三船敏郎・役所広司。
 どちらも時代を代表する顔ぶれで、役者の格としては甲乙付け難いところだろう。

 しかし、人間的深みが描かれているという点では本作の原田版が上回っていると言っていい。
 喜八版はあくまで「日本のいちばん長い日」を多角的にわかりやすく、ダイナミックかつ迫力たっぷりに物語ることに主眼が置かれており、そのぶん歴史上の人物がみな紋切り型のキャラクターとして単純化されていたからだ。

 ところが、終戦の詔書をめぐる閣議が紛糾し、陸軍の畑中健二少佐らが宮城事件を引き起こす後半になると、今度は人間描写に重点を置いている原田版の弱みがいっぺんに出てしまう。
 とくに、徳川義寛侍従(喜八版では小林桂樹が好演)が玉音盤を宮城内部に隠すくだりにまったく触れていないため、一向にサスペンスが盛り上がらず、喜八版よりも相当劣っていると言わざるを得ない。

 また、全体的に画面がキレイなのはいいとして、その半面、ナレーションがまったくないので、史実をよく知らない観客には事実関係が呑み込みにくい。
 見どころは多く、とりあえず最後まで退屈はしないが、いろいろな意味で残念な一篇である。

 ただ、まあ、こういう映画はどんなふうに作ってもケチと文句を付けられるもんだけどね。
 採点は75点です。

(2015年 松竹、アスミック・エース 136分)

 新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーなどで全国公開中

 ※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

 2015劇場公開映画鑑賞リスト
7『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年/米)80点
6『セッション』(2014年/米)80点
5『海にかかる霧』(2014年/韓)85点
4『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年/米)75点
3『アメリカン・スナイパー』(2014年/米)80点
2『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)85点
1『フォックスキャッチャー』(2014年/米)85点
Number965
平成日本シリーズ
激闘録1991
広島vs.西武
定価600円