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『セルジオ・レオーネ』クリストファー・フレイリング
2017年12月15日(金)
Sergio Leone Something to Do with Death

 副題は『西部劇神話を撃ったイタリアの悪童』。
 映画監督の伝記や研究書はやたらと大部で高価なものが多いが、本書は日本語に翻訳された外国の監督の評伝としてはページ数、価格とも1、2を争う大作ではないだろうか。

 なにしろ、上下2段組、ほとんど改行無しの本文のみで535ページ! 索引、資料、後書き込みだと600ページ弱!
 しかも値段は税別5000円ときて、本書の存在を昔から知っていたぼくも、今年になるまで手が出せなかった。

 ところが、そういう本に限って、長さを忘れてあっという間に読めてしまうものである。
 開巻早々、映画監督の父親の元に生まれたレオーネが、子供のころからアメリカ映画の世界に憧れて映画館に通い詰め、長じて父親の仕事場である撮影所に出入りするようになったことを語るインタビューからたちまち引き込まれる。

 表現を生業とする男に大なり小なり見られる傾向として、レオーネも自分の幼少期から青年期にかけての追憶とイメージを大変大事にしていた。
 最初に書いてついに映画化できなかった脚本も、自分の10代のころをモデルにした私小説的な内容であり、その断片が『夕陽のガンマン』(1965年)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)に使われているという。

 著者はイギリス人で、この本を書いた当時は王立美術大学学長にして文化史の教授。
 レオーネ本人やレオーネ作品に関わったスタッフや俳優に執拗なまでのインタビューを重ね、法螺や我田引水の多いレオーネのコメントを丁寧に検証し、彼の人物像と彼が生きた映画界の実相を事細かに綴ってゆく。

 『続・荒野の用心棒』(1966年)を撮ったセルジオ・コルブッチとは親友だったこと、弟子と見られているトニーノ・ヴァレリーが監督した最後のマカロニ・ウエスタン=wミスター・ノーボディ』(1973年)の一部を、製作に回っていたレオーネ自身が演出していたことなど、興味深いエピソードが次から次へと続出する。
 また、レオーネ西部劇の集大成『ウエスタン』(1968年)にはアメリカ製西部劇20作品30場面以上からの真似やオマージュが含まれており、いちいちその元ネタになった映画の題名まで列挙されているのには驚かされた。

 マカロニ・ウエスタン最盛期のイタリア映画界の内幕も詳しく描かれており、とりわけ左翼系シナリオライターだったフランコ・ソリナスを詳しく紹介している部分が興味深い。
 恐れ入りましたと平伏するかしない傑作評伝、600ページは長くなかった、5000円は安くなかったけど。
 
(発行:フィルムアート社 翻訳:鬼塚大輔 初版第1刷:2002年7月5日 定価:5000円=税別)

 2017読書目録

34『細木数子 魔女の履歴書』溝口敦(2008年/講談社)
33『外道クライマー』宮城公博(2016年/集英社インターナショナル)
32『長谷川恒男 虚空の登攀者』佐瀬稔(1998年/中央公論新社)
31『狼は帰らず アルピニスト・森田勝の生と死』佐瀬稔(1998年/中央公論新社)
30『神々の山嶺』劇画版/夢枕獏作、谷口ジロー画(2006年/集英社)
29『もっと厭な物語』文藝春秋編(2014年/文藝春秋)
28『厭な物語』文藝春秋編(2013年/文藝春秋)
27『厭な映画』山崎圭司、岡本敦史、映画秘宝編集部(2015年/洋泉社)
26『ペドロ・マルティネス自伝』ペドロ・マルティネス&マイケル・シルバーマン著、児島修訳(2017年、東洋館出版)
25『山怪 山人が語る不思議な話』田中康弘(2015年/山と渓谷社)
24『鷲は舞い降りた[完全版]』ジャック・ヒギンズ著、鈴木光訳(初出1975年、1997年/早川書房)
23『深夜プラス1[新訳版]』ギャビン・ライアル著、鈴木恵訳(初出1965年、2016年/早川書房)
22『女の一生』ギ・ド・モーパッサン著、新庄嘉章訳(初出1883年/新潮社)
21『ホライズン』小島慶子(2017年/文藝春秋)
20『ロバート・アルドリッチ大全』アラン・シルヴァー、ジェイムズ・ウルシーニ著、宮本高晴訳(2012年/国書刊行会)
19『最後の冒険家』石川直樹(2008年/集英社)
18『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』フランク・ブレイディー著、佐藤耕士訳(2015年/文藝春秋)
17『モンティ・パイソンができるまで/ジョン・クリーズ自伝』ジョン・クリーズ著、安原和見訳(2016年/早川書房)
16『勝ち過ぎた監督/駒大苫小牧 幻の三連覇』中村計(2016年/集英社)
15『旅人の表現術』角幡唯介(2016年/集英社)
14『漂流』角幡唯介(2016年/新潮社)
13『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介(2011年/集英社)
12『百田尚樹『殉愛』の真実』宝島取材班他(2015年/宝島社)
11『夫のちんぽが入らない』こだま(2017年/扶桑社)
10『1984年のUWF』柳澤健(2017年/文藝春秋)
9『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介(2010年/集英社) 
8『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一(2016年/中央公論新社)
7『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』大崎善生(2016年/角川書店)
6『うしろの正面だあれ』海老名香葉子(初出1985年/金の星社)
5『この世界の片隅に』こうの史代(2008年/双葉社)
4『これが広島弁じゃ!』灰谷謙二監修(2016年/洋泉社)
3『薬物とセックス』溝口敦(2016年/新潮新書)
2『ミナトのせがれ』藤木幸夫(2004年/神奈川新聞社)
1『誘拐』本田靖春(初出1977年/ちくま文庫)
新潮45 12月号
祝、新人王獲得!
中日・京田陽太
「プロ1年目は
出来過ぎでした」
定価880円