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後ろめたい物語
2002年02月1日(金)
○2002年2月号掲載

 また物語をつくってしまった。

 社会人ラグビーの取材だ。1月13日に花園ラグビー場であった決勝のサントリー対神戸製鋼戦、サントリーが持ち前の展開力を見せ、50−31で勝った。

 過去の対戦はサントリーの5敗4分け。10度目の対戦で初めて神戸製鋼を破った。

 恥ずかしい話だが、こういう因縁の対決は記者心理を揺さぶる。物語を構築してやろうという勇ましい気持ちにさせる。

 試合展開がどうなろうと、結末はこれでという予定調和のドラマが書かれることになる。読まされる側の思いを配慮する余地が少しでもあれば、また違った原稿になっていただろう。

 ただ、締め切りに追われる立場からすれば、予定調和の物語は早く書ける。デスクにも総じて受けがいい。要するに助平心だ。

 「サントリーよ、勝ってくれ」試合中、私はずっとそう願った。
 神戸製鋼のゲームメーカーのミラーが後半、反則で10分間退場するという運にも恵まれ、サントリーは悲願の日本一になった。

 さあ、取材だ。グラウンドに走った。土田監督をはじめ選手たちの歓喜は大きかった。
 ラグビー部の生みの親ともいえる故佐治敬三会長の遺影を中心に、自然に輪ができていた。閉会式もあり、しばらくは取材どころではなかった。

「総合力ではまだ向こうが上だ。2月3日の日本選手権決勝で勝って、初めて神戸製鋼に並んだと言える」
 39歳の土田監督は浮かれてはいなかった。一度も勝ったことのない相手に初めて勝てたからといって、力が上だとは言えない。その思いが凝縮されていた。

 これはいける。ライバル物語にふさわしい。助平心がまた動く。

 30歳のベテラン永友も言った。
「この年でユニホームを着られるのは幸せ。打倒神戸の気持ちが選手生活の支えだった」
 原稿にぴたりとはまるせりふをもらった。 後はパソコンを打つだけだった。

 確かに早く出稿できた。論理も矛盾していない。

 ただ、この種のくくり方をしたあとにいつも残る、後味の悪さをまた悔いた。
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