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米球界のジレンマ
2002年08月1日(木)
○2002年8月号掲載

 米大リーグを生で見て感じたのは、当地のパワー信仰が生み出す闇の部分だった。いきなりとっぴなことをと思われるかもしれないが、ステロイド(筋肉増強剤)禍が深刻な論争になっている米国球界では避けて通れない問題である。

 7月初旬、ミルウォーキー(ミラー・パーク)でのオールスター戦前夜に実施された本塁打競争で、それを強く感じた。

 ア、ナ両リーグから4人ずつ打者が登場し、優勝者を決めるまで3ラウンドに分けて競う。10球失敗するまで何本スタンドに打ち込めるかというルールのため、時間が恐ろしくかかる。今回は午後7時から始まり、終わったのは午後10時前だった。

 初めは面白い。しかし、ただスタンドに打球が入るかどうかを争うだけなので、徐々に退屈する。

 ところが、当地のファンには大受けなのだ。スタンドに打球が飛び込むと大歓声が上がり、入らないとため息がもれた。なかでもパワーヒッターの(サミー・)ソーサのときには、地鳴りのような歓声が起こった。とにかくよく飛ばす。左翼場外への打球の飛距離などは160メートルはあっただろう。

 当地での取材歴が長い記者が言った。

「彼(ソーサ)がステロイドを使っているかどうかはわかりません。でも、こちらのファンはパワーヒッターが大好きなんです。(マーク・)マグワイアとソーサが70本台を目指して本塁打王のタイトルを競ったとき(1998年シーズン)など、本当に盛り上がりましたからね。
 経営者側も観客増のためには筋肉モリモリで飛ばせる打者が増えるのを歓迎しました。このパワー信仰は国民性なのかもしれません」

 労使一体となって突っ走ったあげく、薬物に頼って筋肉増強を図る選手を黙認してしまった、という解説だった。

 大リーグに所属する約800人の選手のうち、何人がステロイドを使っているのかはわからない。半数に及ぶという説もあれば、一部に過ぎないという声もある。

 ただ確実なのは、ファンの要望に応えようという意図がこの問題の根っこにあることだ。国際紛争において「世界の警察官」を自認してきた米国。そのパワー志向が薬物に結びついているとすれば、やりきれない思いにかられる。

※()内の注釈はアカサカサイクル編