counter
www.akasaka-cycle.com
font size       [old site
 home   blog   works   pick-up   others   profile   bbs 
徳山の強さ
2002年10月1日(火)
○2002年10月号掲載

「アッパーもまともに打てないようなチャンピオンなんて、オレぐらいのもんじゃないですか」
「チャンピオン有利と報道されて、逆に心配なんですよ。そんなに強くないですよ、オレって」
「オレがチャンピオンでいるなんて、何だか不思議な気がするなあ」

 以上のせりふは、8月下旬に5度目の防衛を果たしたWBC世界スーパーフライ級王者の徳山昌守(28)のここ1年ほどの取材メモから、いくつかを拾ったものだ。

 先の防衛戦直後のインタビューでも「オレが強くなかったって、挑戦者が言ったんですか。それなら素直に認めて精進します」と真剣な表情で言った。自信家の多いプロボクシング界にあって、自らの弱さをストレートに打ち出す珍しいタイプに属する。

 秘めた自信の裏返しで、かえって控えめに表現するのかもしれない。そんな解釈も確かにあるが、徳山を取材した限りではそうは思えない。

 初防衛戦では6回に強烈な左フックを顔面に食らい、9回ごろまで記憶が飛ぶ経験をした。3度目の防衛戦でもボディーを攻められ、あわやという場面があった。世界戦を経るごとに強くなった王者とは思うが、盤石の強さを誇る段階には至っていない。

 パンチ力でねじ伏せるというタイプではない。頭脳的な駆け引きと間断ないフェイントで撹乱するのが持ち味で、「見栄えのしない勝ちでも勝ちは勝ち」を持論にする。どんなにつまらない展開と言われようが、最後に勝っているのはオレだ。そう考える王者だ。

 自分の弱点を見つめ、それが自然に口に出る。政治家に例えると、大衆迎合型には恐らくならないだろう。できないことはできないとはっきり言うのではないか。その意味で、大衆的人気を得るチャンピオンには最後までなれないかもしれない。

 でも、それでいいと私は思う。真の強さとは何か。いつもそれを突きつけてくる王者だからだ。それだけに、今回の拉致問題で不当な中傷を受けているのが残念でならない。